前回は、ヤークス・ドットソンのストレスカーブ図を用いて、ストレスと仕事の生産性について理解してきました。
今回は、ストレスのコントロール法(2)ということで、さまざまな職場のストレスコントロール法を、事例を中心に検討してみましょう。下図は、前回ご紹介した図です。
1.オンライン職場での体操
あるICT企業では、ほとんどがオンラインでの仕事になったため、座りっぱなしの状況が長時間に及びました。
ある時に、時間を決めてオンラインの画面を共有しながら簡単な体操をすることにしました。
それによって、過度な集中の継続からくる本人が気づかないストレスの軽減にもなっているとのことでした。
過度な集中や同じ姿勢の連続は、血流を悪くし、結果としてフェイズ1に陥るケースがあるからです。
オンラインのチームで一緒にコーヒー・ブレークを取るなどもほぼ同様の効果が期待できます。
2.製造現場での休憩
ほとんどの工場では、休憩時間が決まっていてそれが守られていることが多いようです。
コロナ禍で、喫煙所などの人数規制が出来ているところもあります。
そうしたなかで煙草を吸わない人たちが、密にならない程度に集まって、マスクをした上で5分程度雑談をしているのだそうです。
雑談は、お互いのコミュニケーションを促進します。
また、工程がいつから変わるなど、時には業務にとって非常に重要な情報が共有できる場合もあります。
お茶・珈琲などを飲むときはお互いしゃべらず、誰もマスクを外していない状況で数分の雑談をすることは、感情の安定にも役立ちます。
フェイズ1の状態から2へ、そして3へ、またはフェイズ4の状態から3へという移行に役立つ場合が多いのです。
これらの雑談は、安全管理上も非常に有益な場合があります。
3.営業現場にて
営業担当者はストレス過多の状態に陥りがちです。
ノルマ、ターゲット、目標、呼び方はともかく、いろいろなハードルを毎月クリアしなければならないという状況です。
そうした時に、上司とのコミュニケーションがうまくいっていなければ、ストレスはますます高くなります。
上司が部下とどのようなコミュニケーションを取るかということが鍵になります。
一方、部下の立場からも出来ることがあります。
筆者が聞いた事例では、上司への相談や報告の際に工夫をしているとのことでした。
営業の現場では、ついつい状況が思わしくないと上司とのコミュニケーションが少なくなりがちです。
そうした気持ちとは逆に、上司とコミュニケーションをする機会を増やすのだそうです。
これは上司から不要なプレッシャーを受けないために、自分でどうすべきか分かっている時でも、あえて上司にどうすべきかを尋ねてみます。
例えば、A案とB案があるのですが、〇〇マネジャーのご経験からは、どちらが良いと思われますか、といったように尋ねるのだそうです。
上司も自分の意見を部下に伝えたという満足感が得られるのでしょう、その後は細かいことを言わずに任せてくれるというのです。
場合によっては小まめな報告をすることで、上司に安心感を与えます。
結果として、上司とのコミュニケーションにストレスを感じなくて済むのです。
こうした信頼関係がストレスコントロールに役立ちます。
誰もがコーチングの上手な上司のもとで働けるわけではありませんので、上司を精神的に味方につけるためにも、こうした工夫が重要なのですね。
次回から2回はレジリエンスを高めるポジティブ思考法について検討してみましょう。