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岩田 徹

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第30回 異質な立ち位置が勝ちどころ

2021/07/09

大阪にある興國高校サッカー部。
全国大会への出場回数はそれほど多くありませんが、
近年毎年Jリーガーを輩出し、注目されている高校です。

昨年は5名の選手がJリーガーに、うち4名はJ1の横浜Fマリノスに入団。
今年もJ1王者の川崎フロンターレに1名が内定するなど、注目度抜群の高校です。

内野監督の指導方針は明確です。
生徒に、プロサッカー選手になりたいか、それとも全国優勝したいか、
どちらか2択で選択をさせると、プロサッカー選手になることを選ぶそうです。

生徒のニーズがプロサッカー選手になること、であるならば、
チームの勝利より個人の成長にこだわる部活があってもいいのではないか、
と、高校の部活においては異質な方針で指導、運営されています。

興国高校の練習内容に走るだけのトレーニング、つまり走り込みはありません。
高校3年間で運動神経系の技術面と、頭を使う戦術面を徹底的に鍛えるそうです。

ウォーミングアップのリフティング練習でさえ、
サッカーの場面場面で起こりうることを想定しての意図を持った練習になっています。

普段はゲームとトレーニングの繰り返しで、ゲームで発生した課題に対して、
解決に導くためのトレーニングを実施。

再度ゲームを行い、個々の技術的な課題と戦術的な理解を深める。
短期的なチームの勝利ではなく、長くサッカー選手として活躍してもらいたい、
サッカーに関わってもらいたい。

そのために技術と戦術を徹底的に鍛え、他とは違う要素を持った選手になってほしい。
そんな想いで指導されているそうです。

実績が出ている今では、
プロの下部組織への入団を断って入学する生徒もいるそうですが、
内野監督がサッカー部の顧問に就任した当時の部員数は12名。

うち7名は高校からサッカーを始める生徒だったそうです。
部活を強くしようにも、中学年代でいい選手は見向きもしてくれません。

そこで内野監督は、足は速いけどボールが扱えない、
センスはあるけど体が小さくて試合に出れない、でも両親は背が大きい。
中学年代では注目されていないが特徴のある選手に目をつけたそうです。

足を速くするには限界があるが、技術の習得面では伸び代が大きい。
体の成長が追いつけばセンスもより活きてくる。
実際に入学時に160センチ前後だった生徒が、卒業時には183センチになり、
プロに入団したこともあるそうです。

個人の成長が一番の指導方法ですが、
チームとしても全国出場を常に争う強豪校になっています。
今後も興国高校、内野監督に注目していきたいと思います。

〜中小企業の採用・育成のヒント〜

優秀な人材は自社に見向きもしてくれない。
自社をアピールして広告を出しても人が集まらない。
そう考える中小企業の経営者も多いのではないでしょうか。

内野監督のように生徒(社員)のニーズを理解し、
指導方針(経営方針)を明確にし、
注目されていないが特徴ある選手(求職者)を集めて個性を伸ばす。

興国高校サッカー部の指導方針や異質な立ち位置は、
採用や育成に苦戦する中小企業のヒントになるのではないでしょうか。