もう随分前の話になってしまいますが、
カタールワールドカップの予選第1戦のエピソード。
日本代表はドイツ、スペイン、コスタリカと予選同組になり、
厳しい戦いになると予想されていました。
結果はご存知の通り、ドイツとスペインに勝利し、首位突破を達成しました。
その初戦となるドイツ戦のこと。
圧倒的な攻撃力を誇るドイツ代表に、日本代表がどこまで戦えるのか。
以前とは違い、日常から欧州のトップリーグ基準で戦う選手たちが
多く選出された日本代表。
とは言え、優勝経験もあるドイツ代表を相手に勝利を予想する人は少なかったと思います。
大観衆が押し寄せ、ワールドカップならではの盛り上がりを見せるスタジアム。
4年に1度の大舞台で、気持ちが昂ぶる中、選手が入場。
セレモニーが終わりコイントスになりました。
コイントスで選択権が与えられたのはドイツ代表のノイヤー選手。
選択権が与えられたと同時に興奮気味に「ボール!」と選択したそうです。
その様子を見た日本代表の吉田麻也選手。
ノイヤー選手の普段とは違う様子を察知し、何かを企んでいると勘付いたそうです。
試合開始前の円陣を組んだ際、吉田選手は、
ドイツ代表がキックオフから必ず何かを仕掛けてくる、とチームメイトに伝達。
通常であればキックオフのボールを後ろに下げてから前線に送り出すが、
送り出すフリをして日本代表を自陣へ誘い込んだ上で、
実はボールを後ろには下げず、キックオフのボールを裏に蹴り込んで来る可能性がある、
と円陣で共有した上で試合開始に臨んだそうです。
そしてキックオフの笛。
ドイツ代表が仕掛けたのは想定通り、後ろ下げるフリをして裏に蹴り込むプレーでした。
想定内のプレーだったため、日本代表は落ち着いてボールを処理。
試合開始から慌てることなくプレーを進めることができました。
気持ちが高まり、興奮状態にある中で見せた吉田選手の落ち着きと察知能力。
そして可能性のある仕掛けを想定し、チーム内での共有。
チームに落ち着きをもたらし、平常心に近い状態で戦わせるリーダーシップ。
素晴らしいキャプテンシーを示しました。
会社、職場においても、日々、小さな変化が起こっています。
取引先や部下も多くのサインを無意識に出しています。
その小さな変化をいかに察知し、可能性のある出来事を想定し事前準備を行う。
事が起こらなければ特に問題はなく、仮に事が起こっても想定内にしてしまえば、
慌てずに対処もでき、組織内に動揺を起こすことなく前進することができます。
経営者、管理職という立場の人間であれば、
こうした日々起こる小さな変化に敏感でありたいですね。