このコラムを連載していることもあり、新聞や雑誌に掲載されている「IT、DX、オンライン」といったキーワードの記事はこまめにチェックしています。
連載し始めたコロナ禍の時期は「非接触」「リモート」に関することが多かった(あくまで個人的感想)気がします。
最近では「キャッシュレス」「マーケティング」というものでしょうか。
いずれにしてもDX時代は本格的にスタートし、社会全体が取り組む最優先の課題の一つであると日々確信が募ります。
前置きが長くなりましたが、そのチェックした記事で最近気になったものをピックアップ。
「丸亀製麺」の運営会社が対話型の生成AIを介して、店舗従業員との面談に取り組むというもの。
ねらいはズバリ従業員満足度の向上。
約3万人の全従業員との網羅的な接点の形成維持をテクノロジーがサポートします。
まずはいくつかの実験店舗から開始したようです。
PCで指定のサイトにアクセスすると、「あなたの一番好きな商品は何ですか?」「何のために仕事をしていますか?」といった質問を、チャット形式で問いかけられます。
質問内容は多岐にわたり「勤務中に熱中してしまう作業」や「プライベートの趣味嗜好」といったものまで。
また特徴的なのは、単なるアンケートのようなものではなく、当該システム専用のキャラクターが対話のような感じで聞いてくるようです。
このキャラクターシステムは、通常のウェブアンケートは単調なやり取りに終始しがちになり、回答者(従業員)が回答に飽きてしまうことを回避することにあります。
見た目もかわいらしいデザインになっており、会話の随所に「なう」や「ドロンします」といった言い回しをします。
あえてちょっと古臭い物言いをすることによってキャラクターに親近感を持たせ、従業員に心を開いてもらうようにしているようです。
面談に参加した従業員の評判は上々のようで「本社がここまでスタッフのことを気にかけてくれているのは驚きだ」「仕事で大切にしたいことなどを考える良いきっかけになった」という声が多かったようです。
成果はこれからでしょうし、反応をみながら改善を加えていくのでしょうが、従業員の声を拾い上げようとする会社のスタンスが伝わっていることはとてもいいことだと思います。
従業員満足度向上の手出しの一歩としては素晴らしいと感じました。
当該システムの開発会社は「マンパワーでは物理的に難しいとされる数万人単位の詳細なインタビューが、生成AIを活用すれば可能になると考えた」とコメントしていますが、人手不足解消に向けたDX活用の幅(可能性)を広げた画期的な取り組みだと思います。
チャット形式での面談は、PCやスマホの文字入力によって対話することになるので、ノンバーバル(しぐさ、表情、声色)を使った承認や共感の意思表示は難しいです。
そこで開発会社は、言語を巧みに操る生成AIの特長を生かしたインタビューのあり方を模索したそうです。
その一つが、質問への回答例をAIが生成して面談相手に複数の選択肢を提示する機能です。
例えば業務に関連するキャッチコピーを尋ねる質問では、AIがあらかじめ「うどんの魔術師」や「うどんはいきもの」といった回答例を複数示すことで従業員らの発想を引き出します。
問いかけに対して反射的に回答するのではなく、回答者の考えを整理しながら対話を深めることをねらいとしているようです。
インタビューの結果は個人別のリポートとしてまとめるほか、職場ごとの傾向分析にも使います。
従業員のモチベーションの高さや、成長を実感しているかを示す数値を店舗や部署単位でとりまとめ、より働きがいのある職場づくりに役立てるようです。
ここからのデータ分析と活用はまた追って公開されると思いますが、とても興味深く待ち遠しくなっています。
外食業界は人手不足や採用難の影響を最も受けている業界。
従業員の定着は業界全体の課題でもあります。
これは飲食業界だけでなく、いずれは他の業界、社会全体も直面してくること。
気持ちよく働いてもらうためにも、従業員の気持ちやホンネをタイムリーにキャッチし、経営やマネジメントの改善につなげていく。
今後そういった取り組みにはAIが不可欠であることを再確認した今日この頃です。