毎回老子の言葉をひとつずつご紹介しています。
コラムの157回目では、「和光同塵」について検討してきました。 老子は言います。
「本当の知者は、知をひけらかさない。知をひけらかす者は、真の知者ではない」と。
今回は「策にこだわるな」です。
「策にこだわるな」とは何か
今回は老子の言葉「策にこだわるな」の意味をご一緒に考えましょう。
老子は言います。
「正義は民を治めるために役立ち、奇策は戦に役立つ」と。
正義にせよ、奇策にせよ、作為的なことはすべて天下を治める役には立たないとも老子は考えます。
無為こそが最上
天下を治め、人民の気持ちを一つにするには無為が重要なのです。
例えば禁止令が増えれば増えるほど、民衆は貧しくなり、民衆の知恵が増すほどに社会は乱れ、技術が進めは進むほど、不幸な事件が増え、法令が整えば整うほど犯罪者の数が増える、と老子は考えるのです。
老子が考える無為とは、「聖人つまり理想の為政者が無為であれば民衆は生き生きとし、動かずにいれば自ら考えて正しくなり、何も手を出さなければ民衆は豊かになり、自然に本来の姿に戻る」ということなのです。
組織を俯瞰すること
現代社会に生きる私たちにとって、この「策にこだわるな」ということがどのような意味を持つのでしょうか。
例えば組織に働く人にとっては、組織の在り方を俯瞰することが必要ということではないでしょうか。
小さな視点のみから下手に考えて行動を起こすと、長期的には地球環境にも、次の世代にとっても「生きづらい」世の中を作ってしまうかもしれません。
例えばカーボン・ニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量の均衡)を目指すことは良いのですが、会社単位でみるとグリーン・ウォッシュという言葉がありまして、ただただ企業イメージを良くして売り上げアップを図るために、見せかけだけの、いわば「偽の取り組み」をすることを意味します。
結果、環境に良くない活動をする企業の売上が伸びてしまい、消費者が地球温暖化に知らず知らずに加担してしまうことなどです。
こうしたことは本来、許されるべきではありません。
真に地球環境を考えるのであれば、自らの組織の行っていることを俯瞰し、二酸化炭素等の排出問題であればグリーン・ウォッシュになっていないか、コンプライアンス全般であれば法令違反や道義的に行ってはいけない行為を隠し立てしていないかなど精査するべきではないでしょうか。
本コラムが私たちの日々の悩みを和らげ、深く自省するきっかけになれば幸いです。
「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。
レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。
(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
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