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星 寿美

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第142回 部下からの訴えをまに受けてはいけない

2024/01/22

全ての訴えという意味ではなく。例えば・・・

「A君は何度注意してもいうことを聞かないから、配置転換するべきだ」
「部署のみんなが、Bさんはリーダーとして失格だと思っている。リーダーを変えて欲しい」

こんなふうに、誰かのことを訴えてきた場合、決してまに受けてはいけないのです。
なぜなら、誰もが主観の世界に生きているので『間違えるから』です。

もちろん考察や対策は必要です。その時に間違えて欲しくないのです。

誰かのことを訴えるときの心理

上司に誰かのことを訴えるとき、その人にどんなことが起こっているのでしょうか?
それは・・・

『強烈な主観』と『強烈な承認欲求』です。

本人は正義感だと思い込んでいるので、主観や承認欲求には気づいていません。
「職場を、会社を、より良くしよう!」と一生懸命に頑張っているので、厄介です。
でも、その大元は主観と承認欲求なのです。

「せっかく入社してきたA君を、育ててあげようと、今まで1年間頑張ってきた。自分は嫌われてもいい。会社のために、A君のために、一生懸命やってきた。でも、A君は変わらない。サボり癖がある。どんなに話しても無駄だ。意見もない。もう無理だと思う。この部署ではA君のためにもならないし、他の人にも迷惑で、全体のパフォーマンスが落ちるから配置転換してほしい。」

このような訴えは、コンサルに入っているとしばしば起こります。

この人の話だけではなく、周りの人にも十分話を聞いた上で『配置転換』する、ということが起こるわけですが・・・

実は、ほとんどの場合、A君にはなんの問題もないことがわかります。

上司に訴えてくる人をQさんとしましょう。
Qさんは仕事もできて、なくてはならない存在です。
責任感もあり、実績も出しています。

強烈な主観は間違える

会社としては、Qさんの存在は大切です。
しかし、Qさんは強烈な主観の持ち主なのです。
人間、どんな人も主観の世界で生きています。
けれど強烈だと問題が起こります。

例えば
「仕事なんだから、こうするべきだ!」
「普通は、こういうことに気づくはずだ!」
「どうしてやってないんだ!と注意したとき、いつも何も言わない。聞いているのに答えない。意見のないやつだ!」

このように、Qさんの基準に合わなければ批判してしまうのです。
そして「みんなそう思っている」「普通はそうでしょ?」などの感覚が『普通』と思っています。

しかし、人間は多種多様。
同じことに気づかない人の方が多いのです。
性格も成長のタイミングも何もかも違うんですね。

『会社のために一生懸命』という部分は評価したいのですが、それゆえに1人の成長できる社員が潰されるのは切ないことですね。

自分が思っている通りに人が動かないと批判してしまう。
でも、本人は強烈な主観なので『こんなに私が根気よく教育しているのに、なんで!』と不満を募らせます。

例えば「なんで、ここに気づかないの?」「なんでやってないの!」そういう伝え方をして「ありがとうございます」と成長する人もいれば「一生懸命に頑張ってるのに注意ばかりされる」と自信を無くす人もいます。

教育とは、押し付けるものではなく、相手から才能や能力を引き出すものですから、効果がなければ「どうしたら、相手の持っているタネを咲かせることができるのか?もし咲かなければ、こちらの関わりの何を変えるべきなのか?」という視点はいつも必要です。

Qさんは、相手を決めつけて「どうしてやらないの?」という関わりを繰り返していました。
それは、言われた人にとって、やる気を持って頑張っていたとしても「どんなに頑張ってもいつも注意ばかりされる。
なんで?と言われても、何か言うと否定されるし、意見がないと決めつけられる。
もう何を言っても無駄だ。私は仕事ができない人間なんだ」と日々の積み重ねの中で自信を失っていく。

Qさんが頑張れば頑張るほど・・・というカラクリなのです。
しかし、Qさんが悪い、ということを言いたいわけではないのです。
人間関係は多かれ少なかれ、こういうことばかり。
いい悪い、ではなく、こういうことが日常茶飯事、起こっているということなのです。

強烈な承認欲求は間違える

自分の価値を認められたい!
それは誰もが持っている欲求です。
でも強烈になると問題が生じます。
相手を貶めて自分の価値を正当化する場合があるからです。
でも、本人は『強烈な主観』と同様に「職場を、会社を、より良くしよう!」と一生懸命に頑張っているので、厄介です。

話を聞いていると、必ず誰かのアラを指摘しています。
そして「こうするべきだ!」という主張が強く、自分の成果が過大報告します。

しかし、強烈な承認欲求の人を引きでみると、確かに『成果』を出してはくれているけれど、周りの人たちがかなりフォローしているからこその成果だったりします。

『強烈な主観』と『強烈な承認欲求』の社員、どうする?

さて、本人は正義感とやる気がいっぱいで成果も出している社員です!どう対応したらいいのでしょうか?

まずは、その人を十分認めて労りましょう。
その人のおかげで本当に助かっているということを十分に伝えることです。

次に、どうなったら嬉しいのかを一緒に言語化しましょう。
例えば「なるほど、話はよくわかりました。ところで、どういう風になったら一番嬉しいですか?」

すると「会社が良くなれば」「部下が成長すれば」など答えるかと思いますが、とても抽象的です。
「会社が良くなるとは、人間関係が良好で、売り上げも上がっている、そういうことですか?」と抽象度の高い話を具体的にしていく必要があります。

人間関係がいいとは、報連相がうまく伝わっているということですか?
売上が上がるとは、いつも目標数値を達成できるという意味ですか?

そんな風に、どんどん明確にしていきます。
そして、

「戦力のQさんの時間と労力を、いつまでもA君にかけるのはもったいないので、ひとまず教育係を変えましょう。」

と提案します。
それが私からの提案です。

余談ですが、仮にQさんに・・・

「もし、A君が驚くほど成長したら、まさにこの部署の伝説になりませんか?」
「A君の能力が発揮されて、周りにいい影響を及ぼすような存在になったらどうですか?」

と聞いてみます。
大抵は「それは伝説になると思います。理想です。でも無理ですよ。」と答えるでしょう。

そうなんです。
強い正義感のある人は、A君が活躍してしまうと、自分の正義の向けどころを失うので、困ってしまうわけです。(もちろん、全て無意識で、健在意識では成長を願っています。)

先に書いたQさんのような方を、私たちは『サイレントトラブルメーカー』と呼んでいます。
QさんがいなければA君は成長できる人材なんです。
それが強烈な正義感と、強烈な承認欲求によって、妨げられているだけなのです。

もちろん、A君にも、色々と問題はあるかもしれません。
だけれど完璧な人などいません。
誰もがデコボコなんです。
だから、人を型に嵌めようとすればするほど苦しくなります。

だから、Qさんの価値を存分に認めて、それから、教育係から開放して、長い目で見守って欲しいとお願いしましょう。

無事にA君が育ったとき、きっとQさんは「私が命を削って育てたんだ」というと思います。
そう言わせてあげましょう。

結論は、A君からQさんを離してあげる!
A君にあう教育でグングン伸びてもらう。
A君もQさんも会社も部署も、みんなHAPPY!ということです。

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