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深山 敏郎

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第128回 困ったときの老荘だのみ エピソード28「大制は割かず」

2023/11/28

コラムの127回目では、老子の言葉「自然な生き方」を検討してきました。
「道」を知る者は「道」を知らない人を救うと老子は言います。

今回は老子の言葉「大制は割かず」をご紹介します。

「大制(たいせい)は割かず」とは

老子は、「雄」の本質を把握したうえで「雌」の立場に立つならば、万物の源となりえて、「道」に沿って無心に環境を受け入れようとする赤子の状態になることができると言います。
「白」の本質を把握したうえで「黒」の立場に身を置くことによって万物の基準になりえると言います。
そのようにして、「道」と一体になることができるというのです。

ちょっと難しい表現ですが、異なる立場を理解する重要性を老子は言いたいのではないでしょうか。

万物を包摂する

「尊貴」(そんき)の本質を理解したうえで「卑賎」(ひせん)の立場にいれば万物を包摂することができると老子はいいます。
いわゆる金持ちの得ようとする高価な品、生活を理解したうえで、社会の底辺にいる一般庶民の生活をすることであらゆるものを包摂することができるというのです。

包摂をめぐっては、近年盛んに言われているSDGsの中にダイバーシティ・アンド・インクルージョン(多様性と包摂)という言葉があります。
多様性を理解するということと、そのうえですべての要素を含んだ社会の在り方の重要性を説いていますが、数千年前に老子が伝えたかったことは、この考え方と符合するように感じられます。

立場から自由になる

私たちはともすれば自分や自分を支えている「立場」を貴ぶことに終始し、他の立場を理解しようとせずに批判したり拒絶することがあります。
それも人間らしいところでしょう。
しかし老子の考え方からすると、共感性を発揮する、つまりいろいろな立場を重んじてものごとを考えることこそが社会生活を子供のように無邪気に送ることができるコツではないでしょうか。

本コラムが私たちの日々の悩みを和らげ、深く自省するきっかけになれば幸いです。

「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。

レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。

(筆者:深山 敏郎)
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