第126回 困ったときの老荘だのみ エピソード26「“静”は“動”を支配する」
2023/11/14
コラムの125回目では、老子の言葉「人間の偉大さ」を検討してきました。 私たち人間も、大自然の一部として偉大な存在である、と老子は言います。
今回は老子の言葉「“静”は“動”を支配する」をご紹介します。
「“静”は“動”を支配する」とは
老子の言う「“静”は“動”を支配する」とは、君主のあり方を表現する方法で、天下の政治に心を奪われて、自己を忘れてしまってはならないということです。
自己を軽視せずに、みだりに動いてはならないということで、絶えず悠然としていることの大切さを教えてくれます。
軽ければ本を失う
私たちは日頃、ちょっとしたことに過剰に反応し、作為をしようとします。
そして「あの時なぜあんなことをしたのだろう」といったように後悔するのです。
老子は為政者の徳を述べていまして、自己を滅却し、軽々と動かないことを繰り返し述べているのです。
重いものは根となって、軽いものを支えます。
また、静謐(せいひつ:静かで泰然としていること、静かで落ち着いていること)は、絶えざる動きを支配します。
聖人は旅がどれだけ長引いても、輸送車を離れて先走りしない。
重いものこそ根本であることを理解しているからだ、と老子は言います。
世の中の事象に振り回されて、自分の本分を見失うことは、つまり老子の言う「静」や、ましてや「道」ではないのです。
環境に振り回されないことこそが、我々が生きていく上で大切なことです。
世の中を支えるとは、つまりこうした生き方が出来るかどうかにかかっています。
経営において心がけたいこと
他者の上に立って指導していく側の人は、それが単に役割として与えられたものであることを理解し、人を支配しようとするのではなく、世の中に貢献していこうという点でのみ仕事の満足感を得られると言えましょう。
事業環境が激変しているといわれている現代、ついついその変化にのみ注目しがちです。
また、時代の流れに迅速に乗り、他者、あるいは他社よりも一刻も早くトレンドを体得しようと思うのが私たち(いわば凡人)です。
しかし、経営において真に心がけるべきは、自らの主体性を失わず、何のために仕事をしているかを深く見つめることではないでしょうか。
本コラムが私たちの日々の悩みを和らげ、深く自省するきっかけになれば幸いです。
「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。
レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。
(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
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