コラムの124回目では、老子の言葉「功を誇るものは功を失う」を検討してきました。 私たちは、背伸びをせずに絶えず自然であることこそ重要である、と老子は言います。
今回は老子の言葉「人間の偉大さ」をご紹介します。
「人間の偉大さ」とは
老子の言う「人間の偉大さ」とは、「道」を体得した人の偉大さのことです。
老子は天地が生ずる以前にすでにある物が存在したと言っています。
それは混とんとして、形がなく人間が蝕知不可能であり、捉えどころがないものなのです。
また、老子によると時間空間を超越した存在です。
ゆえに他に依存することなく独立で存在するものであり、老子によれば「天地の母」ということになります。
それは人間が規定することができないため、名づけることも出来ません。
仮にそれを「道」と呼んでみましょう。
この「道」は、ひとつの言葉で言い表すには大きすぎるのです。
それはまた、過去から現在、未来へと永遠に続くため無限の時間的な広がりをもちます。
この「道」は大きなものであり、時空ともに無限の広がりをもつものです。
「人」もその一部であり、「天」や「地」同様に大きいのです。
「道」を理解している人は、自らの中にもこの宇宙といってよいほどの永遠さ、広さ、大きさを持っていることをよく理解していることになります。
だからこそ私たち一人ひとりが大きく、偉大であるのです。
生きていく上で「人間の偉大さ」を理解する
私たちは、ともすると過去、現在や将来の状況の見通しが自らに不利に見える場合に気が滅入り、ものごとのポジティブな面が見えなくなります。
欧米には、次のようなことわざがあります。
「すべての雲には、銀の裏地がついている(Every cloud has a silver lining.)」
これは私たちの人生における雨降りの時期であっても、雨雲の上(太陽側)は必ず銀色に輝いているということです。
ものごとを一面的に捉えず、万事が変転し、いろいろな面を持っているということを忘れたくないですね。
私たちは、この「道」という大きな物の一部であるのですから。
本コラムが私たちの日々の悩みを和らげ、深く自省するきっかけになれば幸いです。
「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。
レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。
(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
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