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益田 和久

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第136回 ガブテック

2023/10/12

自治体の職員教育や人材育成に関わっていると、「お役所仕事」という言葉に触れることがあります。
一般的には「形式的で不親切、且つ時間がかかり効率性の悪い仕事ぶり」のことをいいます。
自治体職員の研修で日常業務についてのお話を聞くことがありますが、世間でいわれるような形式的で不親切といったことはあまり感じません。
公平公正を基本としていることや、法律や条令に従っての言動になりますので、世間的な視点からするとどうしても「形式的で不親切」といったイメージがあるのかもしれません。
一方で効率性という点では、改善の余地はあると感じています。
手続きに時間がかかる、窓口で待たされる等、状況はなかなか改善されていないような印象を受けます。
多くの自治体が「DX化」を標榜し専門部署を創設して推進を図っていますが、想定通りに進んでいないのが現状のようです。
そこにきてマイナンバーカードの問題もありましたので、”足踏み感”は否めないかもしれません。
現在弊社は自治体向けに「段取り・タイムマネジメント」の研修を提供していますが、それはあくまでも職員の業務効率化に対する意識向上やそれに付随するスキルアップに留まります。
やはり自治体業務の考え方やしくみを変えていかないと、なかなか変わらないような気もします。

そのような状況において、その「お役所仕事」を変革しようとしているスタートアップ企業が続々と出てきています。
DX支援のスパイスファクトリーという会社は、住民から寄せられる動物に関する苦情や届け出の管理を効率化するシステムを開発しました。

東京都動物愛護相談センター各支所には、「犬の放し飼いをなんとかしてほしい」「猫が庭に入ってくる」といった苦情や届け出が、年間500件もあるそうです(ピーク時)。
当該情報は文書管理ソフトに手入力処理をしますが、この書類業務というのが1案件あたり数十枚に及ぶほど煩雑なもの。
こちらに時間をとられることで、(適切な飼育ができていない)飼い主への生活支援や精神的ケアに手が回らないという事象が発生しています。
この時間確保に向けて、東京都が依頼をしたのがスパイスファクトリーでした。

システムの企画設計段階からセンター職員も主体的な立場として参画しました。
「届け出の位置情報を地図上に示せないか」といった現場の要望をスパイスファクトリーが反映して、1カ月間でシステムを完成させたようです。
届け出や問い合わせをシステム内のデータベースで管理し、過去の記録もキーワードで検索できます。
情報を回覧して決裁するいわゆる電子稟議機能も搭載しています。
あとは東京都の最終決済が下り次第、利用を開始するようです。
業務効率化の見通しもつき、飼い主との対話の時間確保に向けて現場も意気込んでいます。

DX化に推進によって最近注目されている「ガブテック」。
英語の「ガバメント(政府)」と「テクノロジー(技術)」を組み合わせたもので、テクノロジーで行政サービスを向上させる取り組みを意味します。
先行する欧州などは、7~8年前から市民目線の利用体験を重視し、政策やサービスを設計する手法を取り入れています。
イギリスの調査会社が打ち出す「人間中心公共サービス指数」によると、日本は2022年時点で主要30カ国中22位。
出遅れてる感は否めませんね。
この他にも、窓口申請業務の電子化による待ち時間の削減や、市民から寄せられた意見をAIで解析し着手までの時間短縮等、いろんなサービスが出てきています。

自治体の方は、真面目で基本的に何でも自分たちでやろうとする傾向があります。
そういった点からすると、まだまだ外注できる部分がたくさんあると思います。
それは民間、特に中小企業にも同じことが言えるのではないでしょうか。
研修中に受講者から出た職場の懸案事項や問題点についても、今後はDXにつなげていくファシリテーションも必要ではないかと感じた今日この頃です。