コラムの113回目では、老子の言葉「わが身を貴べ」を取り上げました。 老子は自身を大切にすることを重視していました。
私たちにとっては心を重要視して、やるべきことをやる、そしてやってはいけないことをやらないという重要性を説いていました。
今回は「『道』のはたらき」をご紹介します。
「道」は蝕知不可能である
老子の言う「道」は、見ることができず、聞くこともできず、また、触ることもできません。
つまり「道」そのものは蝕知不可能であるため、五感では把握することはできません。
「道」は直観で把握することができるものであり、しかし形がないため、私たちは全貌を知ることはできません。
だからこそ「道」は根源であり、また、時空を超えたものなのです。
「道」は一般性
「道」は個別の事象ではなく、一般性です。
具体的ではなく、極めて抽象度が高いものと捉えればよいでしょうか。
例えば、会社経営、部門経営をしていて成功するのはなぜなのか、個別の事象にとらわれず、その本質を知り実行するもののみがそれをすることができるのです。
ビジネス成功の法則とは何か、顧客や関係者が必要なことを企画し、それを誠実に実行していくしか方法はありません。
シェア何%とか、利益がいくらとか、企業価値がどうということは個別の事象にすぎません。
それらにあまりにも捉われると、ビジネスの本質を忘れてしまいます。
KPIやCSI、そしてESなど指標というものが存在します。
そうしたものは「道」そのものではなく、「道」を部分的にでも把握する道具に過ぎません。
私利私欲といったことに捉われすぎると、ビジネスそのものはできず、「金儲け」をしているにすぎません。
「金儲け」を否定しているわけではなく、「金儲け」が自己目的化した場合に、コンプライアンス違反が行われ、社会を欺くことになります。
それでは真のビジネス成功というにはほど遠いものです。
「道」とは世の中そのものであり、だからこそ私たちが全貌を把握することは困難です。
そうした「道」があると信じて、絶えずものごとを多面的・総合的に把握しようと努力することこそが、「道」を体現することではないでしょうか。
本コラムが私たちの日々の煩悩を少しでも和らげることが出来れば幸いです。
「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。
レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。
(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
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