第100回 自分を勇気づけてくれる言葉③ゲーテの格言
2023/05/16
今回はこのコラムの100回目ということで、コラムを書き始めてから100週間が経過したことになります。
約2年続けてきたわけで、あっという間でもあり、原稿の期限が来ると、あたふたとしたこともありました。
前回は「自分を勇気づけてくれる言葉②坂村真民の言葉 二回目」として「念ずれば花ひらく」をご紹介しました。 今回は自分を勇気づけてくれる言葉③として、ゲーテの格言集から筆者が勇気をもらった経験談を書きます。
形作れ 芸術家よ、語るな
「形作れ 芸術家よ、語るな
ただ一つの息吹だにも、汝の詩たれかし」(ゲーテの格言より)
この格言に出会ったのは、50年ほど前のこと、ゲーテの「格言集」を読んでいたときのことです。
ゲーテはご存じのとおり、ドイツにとどまらず世界を代表する詩人の一人であり、また、「ファウスト」という壮大な詩を書きあげた人です。
”形作れ 芸術家よ、語るな” という部分は、わたしたちに評論家ではなく人生の主人公であれ、つまり当事者意識を持ち、有意義な生き方を心がけなさいという意味に、筆者は解釈しています。自分の人生の意思決定を他人に委ねるのではなく、自分で判断し、決定する。
その結果、当事者として後悔のない人生を送る。
つまり悪い意味での評論家ではないということなのでしょう。
よく企業研修で筆者は「社内に評論家は不要です」とお伝えします。
グループ討議や個人の意見を求められた時に、「会社が悪いので、どうしようもない」、「上司がそういう方針でやれというので、仕方なく従っている。私の責任ではない」といったニュアンスの発言が出ることがあります。
それは自分の職務にプライドを持った大人が言うべきことではない、と筆者は思います。
仕事で他人のせいにする人は、自分が当事者の一人であることを棚に上げていることに気づいていません。
そうした場合、どうしたらよいのでしょうか。
「自責」か「他責」か
読者の皆様は「自責」や「他責」という言葉をお聞きになったことがおありでしょう。
自己責任と他者責任ということです。
何でも「自己責任」ととらえることには限界があるでしょうが、会社を選んだのも自分、今の職場を続けている(つまり辞職しない)という選択をしたのも自分であるという観点からすると、「自己責任」がビジネスの基本になることでしょう。
筆者もかつて共同で会社を立ち上げたことがありました。
相手と自分の立場の違い、意見の違いから相当にぶつかり合い、私が退社することになりました。
相手を責めたくなる気持ちも当時はわきましたが、よくよく考えてみると、相手と組んだのも自分の意思であり、また、退社するという決断をしたのも、自分の意思でした。
今ではこれでよかったと心の底から思えるようになりました。
また、意見の合わなかった相手に対しても、感謝の念が大きくなりました。
自分の人生上、とても良い勉強をする機会を与えてくれたからです。
客観的に状況を観て、最終的に「自己責任」で判断し続ける
最近、友人と話をしていて「あなたは若いころから、自分の考えをしっかり持って生きていたのですね」と言われました。
自分の人生を振り返る経験などあまりないのですが、よくよく考えてみると、条件のよい仕事を何度もオファーされたにもかかわらず、自分のやりたいことだけを選んでやってきたという事実にも気づきました。
世の中のオーナー経営者の方々には、こういうタイプがきっと多いのだろうなと思う反面、その過程でいろいろな摩擦や葛藤が山ほどあったに違いないとも拝察します。
これから起業なさろうという方も、また、今の組織で生きがいを感じて続けていく方も、それぞれがこのゲーテの格言の後半部分、「ただ一つの息吹だにも、汝の詩たれかし」という生き方をなさることでしょう。
きっと自分のすべての言動が、まさに自分の生き方であると感じられた時に、ご自分のレジリエンスも最高潮に高まっていることでしょう。
レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。
(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
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