第84回 職場組織のレジリエンス(1)ビジョンの明確さ
2023/01/24
前回は、職場チームのレジリエンスの最終回として「変化や変革を歓迎する風土を持っている」についてお話してきました。
今回から会社全体つまり、組織のレジリエンスについてお話をします。
今回は「ビジョンの明確さ」というテーマでお話をします。
よいビジョンは誰から見て明確なのか
そもそもビジョンというのは、どういう市場の、どういう環境(変化)の中で、どういった自社の強み(テクノロジーなど)でビジネスを行うかということです。
よいビジョンとはどのようなものかを考えるために、ビジョンは誰から見て明確だとよいのかを考えてみましょう。
前回、「価値前提」と「事実前提」というH.A.サイモンという経営学者の考えをご説明しました。 よいビジョンとは、自社の「価値前提」を明確にした上で、日々刻々変化していく経営環境に柔軟に適応していくか(「事実前提」)、ということです。
ビジョンは誰にとって明確なことが望ましいのでしょうか。
理想的には、あらゆる利害関係者集団(顧客、株主などのオーナー、役員や従業員、協力会社、地域社会、その他すべての関係する個人や社会)にとって明確であることです。
そうした中で、特に大切なのは「顧客」と「役員や従業員」です。
「顧客」にとって明確なビジョンとは
この会社は自分たち顧客にとって、どのようなメリットを与えてくれるのか、また、どのような将来像を持っているのかは、非常に重要です。
例えば、とにかく安く顧客に商品やサービスを提供すればよいという考え方だけでは、例えば協力会社に無理なことを押し付けたり、従業員や取引先への人権配慮を怠ったり、地球環境の破壊をしてしまう、ということになり、それが発覚して顧客離れにつながりかねません。
「役員や従業員」にとって明確なビジョンとは
会社が活動を継続していくには、質の高い「役員や従業員」の共感を得る必要があります。
外面(そとづら)は良くとも組織内に入ると幻滅するような組織が数多く見受けられます。
数値で表現する企業価値が非常に高いGAFAレベルの企業でも、従業員を大切にしない企業が数多く見受けられます。
短期間働き、離職することを前提にする組織です。
もちろん、技術が身に付き、ステップアップをするために移籍するのは大変素晴らしいことです。
しかし、「二度とこの職場で働きたくない」といった幻滅感や敗北感をもって退社するのではビジョンの達成は困難といえるでしょう。
お客様を大切にし、同時に役員を含めた従業員を大切にする組織、そしてビジョンであることが重要ではないでしょうか。
レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。
(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
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