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益田 和久

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第98回 AIはビジネスパートナー

2023/01/19

セブンイレブンが、今春からAIによる発注支援システムを全店に導入するとの報道がありました。
AIが各店舗に応じた発注案を作成することで発注作業にかかっている時間を約4割減らせるそうです。
この背景には、慢性的な人手不足でありながら、購入商品の宅配やクリーニング、レンタサイクル等の提供サービスは多様化していく状況に、加盟店オーナーから悲鳴があがっていることを受けてのものだと思います。
コンビニ業界では、労働力確保が難しい上に店舗経営者が老齢化のため廃業や離脱(せざるを得ない)ケースも少なくないと聞きます。

また働き方改革の流れの中で、店舗経営は(自営業とはいえ)過酷な労働環境が多く、以前よりも出店希望者が少なくなっているという話も聞きます。
少し前に、24時間営業の是非等が話題になったときがありましたが、公正取引委員会の実態調査によると、加盟店オーナーは、業務時間について「非常に辛(つら)い」「どちらかといえば辛い」という回答が6割を超えています。

そもそも従前より発注作業は、加盟店オーナーやベテランスタッフの経験や勘をベースにやっていることもあり、欠品や廃棄などが店舗によってバラツキがありました。
AIの発注業務活用で実際にどれくらい時間が削減できるかというと、週平均10時間30分かかっていたのが6時間30分に減少したようです。
この時間を売り場づくりや経営シュミレーション等の「戦略立案」の時間に充てることができるようになり、実際に実験エリアのお店では、加工食品や雑貨の売上高が前年同月比3%増えたそうなのです。

店舗の平均日販はピーク時だった20年前よりも少しダウンしており、人件費や光熱費等の店舗運営コストが上昇している現状を鑑みると「データ経営」の徹底で日販の底上げをしていくのは不可欠なのかなと思いました。

このコラムでも、AI活用は何度か寄稿しました。
AIの導入は、労働環境の改善や作業の効率化がはかれることは勿論ですが、最大のねらいは真の意味での「生産性向上」だと思います。
任せられる作業はAIに託して、人間はもっと付加価値のある仕事に力を注ぐことができます。
付加価値の高い仕事とは、新商品やサービスの開発、人材育成などでしょうか。
また既存顧客の囲い込みや新規顧客の開拓等の営業活動にも時間を割くことができるようになります。
また、AI導入により、素早いデータ収集によって情報や顧客のニーズをいち早くつかむことができるので、顧客満足にもつながります。

AI導入のメリットは数多くありますが、実際には大企業が先行して導入しているイメージがあります。
本来であれば、人手不足で苦戦している中小企業が、AI導入で働き方を変えていかないといけませんが、導入費用や導入後の人員配置等で、二の足を踏んでいるところも多いと聞きます。

AI導入ありきで考えると手段が目的になってしまいますし、AIが得意としているのは、パターン化された仕事です。
人がやったほうがいい(やるべき)仕事との線引き、連動を考えていくことが重要だと思います。
まずは身近なところから、例えばメールの自動返信やiPhoneのSiri、GoogleのAlexaをきちんと使いこなしてみようと思った、2023年の年頭でした。