前回は、「メンバー同士の助け合い」についてお話してきました。
今回は「変化や変革を歓迎する風土を持っている」というテーマでお話をします。
変化や変革を歓迎する2つの前提:価値前提と事実前提
「外部環境が激変しているVUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代であるから組織変革をする」といわれると、何となくそうなのかと納得したつもりになることがあるかもしれません。
本来、組織もチームも、またそこに所属、あるいはさまざまな形で利害関係のある個人もなぜ変化や変革をする必要があるのでしょうか。
そこで考えるべき2つの「前提」があります。
ハーバート・A・サイモンというノーベル経済学賞を受賞した学者は、組織(チームも含む)には大きく2つの意思決定の前提があるといいます。
ちなみにサイモンは、経済学の他にも認知心理学、社会学、政治学、組織論、システム工学などに精通した学者でした。
話を元に戻しましょう。
意思決定において重要な2つの前提は、「価値前提」と「事実前提」です。
「価値前提」というのは、組織(チーム)の理念にあたるもので、抽象的な概念です。
これは組織(チーム)が長期間大切にしている要素です。
例えば、よく知られた経営哲学・理念として、「お客様は常に正しい」(ウォルマート)、「私たちは紳士淑女に奉仕する紳士淑女です」(ザ・リッツカールトン)などがこれにあたります。
それに対して「事実前提」というのは、具体的であり、一般的には数値で表現しやすいものです。
数々の指標があります。
また、日々刻々変化し続けています。
組織やチームの目標は、この「事実前提」を前提にしています。
「価値前提」を尊重し、「事実前提」の変化に柔軟に対応することがチームにも望まれます。
柔軟なものだけが生き残ることができる
またまた学者の名前を出して恐縮ですが、英国の哲学者、社会学者ハーバート・スペンサーは「適者生存(環境に適したものだけが生き残ることが出来る)」という言葉を残しました。
チームに置きかえてみると、事実前提である経営環境を幅広く客観的に観た上で、環境に適応していこうという意思と行動力があるものだけがチームとして生き残っていくことができるということです。
チームの中に、外部環境をしっかりと観察して、必要な変化・変革を歓迎する風土があるかどうかは、生き残るために非常に重要な要素です。
レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。
(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
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