HACHIDORI NO HANE(ハチドリのはね)HPトップ

深山 敏郎

ホーム > 深山 敏郎 > 記事一覧 > 第82回  職場チームのレジリエンス(9)メンバー同士の助け合い

第82回  職場チームのレジリエンス(9)メンバー同士の助け合い

2023/01/10

前回は、「反対意見の尊重」についてお話してきました。

今回は「メンバー同士の助け合い」というテーマでお話をします。

助け合いはなぜ必要か

前回、職場では「反対意見を尊重することが重要であり、そのために『悪魔の弁護人』の仕組みを使ってはどうか」とお伝えしました。
反対意見を言うことや傾聴することは非常に重要ですが、一つだけ前提があります。
いついかなる時も、“チーム”であるということです。

チームには共通の目的・目標があります。互いを尊重しながら、本音で意見を戦わすことが必要ですが、個人攻撃にならないことと、自分の発言の根拠を明確に示すことが前提です。
そうすれば意見交換がチーム行動のリスクマネジメントにつながります。
意思決定にあたっていろいろな可能性を事前に検討できるのです。
その上で、チームとして力を合わせる。
具体的には互いに困った時に助け合うのです。

チームは常に助け合う

チームはどのような時に助け合うことが必要でしょうか。

その答えは「常に」です。
では、「個」を忘れて他者優先でいくのか。それは異なります。
自他ともに尊重します。
TA(交流分析)という心理学の分野では、「I’m OK. You’re OK.(自他尊重)の姿勢」といいます。
一人ひとりの「個」や「自己」を尊重しながらも、「他者」や「チーム全体」の仕事の進捗に目配りをした上で、必要と思われる時に支援を申し出ることが望ましいのです。

過保護にならない相互支援とは

優秀な上司にありがちなあやまちの一つに、「過保護」や「親切の押売り」があります。
部下の責任領域を侵して上司が自分の考えだけで一方的に手を出す、口を出すことです。
これは「相互支援」ではありません。
「相互支援」とは、状況を深く理解し、相手に支援を申し出て、部下の自律性を阻害しないよう部下の意見を傾聴して、部下が十分に納得した状況において必要最小限の支援をすることです。

例えば、残業続きで疲れ気味の部下に対して、仕事の優先順位を部下とともに再確認して部下の頭の中を整理する手伝いをするとか、部下からの相談に対して、部下がまだ気づいていない仕事の方法、ツールやその使い方を説明するなどがふさわしいでしょう。

同僚を支援する場合には、例えば同僚の子供が熱を出したといった状況においては、「お互い様」の考え方のもとに、一時的に仕事を代わって実施する等が相互支援です。
ふさわしい支援の仕方は、チームの型によって変化します。

チームの型と相互支援のスタイル

今回のコラムでは、極めて伝統的な日本のチームを想定してお伝えしてきました。
チームには大きく3種類くらいに分類出来ます。
仮に「野球型チーム」、「サッカー型チーム」、「テニスのダブルス型チーム」と呼んでみましょう。

「野球型チーム」においては、ピッチャー、キャッチャー、野手など守備には役割が決まっています。
また攻撃には打順が決まっています。
アメリカ合衆国などによくみられるチームのスタイルで、仕事を文章で記述した「職務記述書」で仕事の種類を細かく決めてあります。
「上司の代わりにコピーを取る」ということが業務に含まれるかどうか、など細かく規定されており、それに違反すると職種別労働組合などを通じて訴えられるというケースもあります。

「サッカー型チーム」では、ゴールキーパーとその他では役割やボールにピッチ内で触れることが許される、許されないといったルールは決まっているものの、その他は自由です。
誰がゴールを決めても良いのです。
ただし、大きくは主に攻撃を担当するフォワード、攻撃も守備も担当するミッドフィールダー、主に守備を担当するディフェンダーといった役割があります。

「テニスのダブルス型チーム」では、前衛・後衛といった前提はあるものの、どちらがどのように球を打っても良いのです。
かなり習熟した同士のチームにふさわしいスタイルです。
この型は伝統的な日本的企業が前提としてきたものですが、現在の働く環境には必ずしも合致しなくなってきています。
労働環境の流動性が高く、相互に深く知り合うための機会も少ないためです。

会社や部門によって、どのようなチームの形をとっているかによって、支援の形も異なります。
こうしたチームの型や働き方の多様性を理解した上で、チーム内でどのような相互支援が望ましいかをオープンに話し合っておくことが望ましいでしょう。
これまでご紹介した3種類以外のチームもあるかもしれません。
話し合って柔軟に対応されてはいかがでしょうか。

レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。

 (筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
http://miyamacg.com/
toshiro@miyamacg.com