第59回 この人に聞く！～人・組織が羽ばたく時～
2022/01/30
東京港醸造株式会社 代表取締役杜氏 寺澤善実様（其の3）
今回の対談は、東京港醸造株式会社 代表取締役 杜氏の寺澤 善実様にご協力頂きました。
東京港醸造株式会社様は、東京のど真ん中港区で大都会に蘇った酒蔵としてお酒造りをされております。
代表取締役杜氏の寺澤善実様が40年以上に渡る日本酒造りの経験から開発された酒造りとはどんなものなのか。
今回は寺澤様が描く今後のビジョンをお届けします。
金山：先週までは、創業から現在に至るまでのストーリーをお伺いしましたが、今週は寺澤さまが描く今後のビジョンについてお話しを聞かせて頂けますでしょうか。
最後の日本のお別れを
東京駅酒造所というのが一つのきっかけになると思うんですが、人が集まるところに今までの経験と技術を生かして酒蔵を作っていきたいですね。
駅であったり、観光地であったり、温泉地であったり、もしくは空港というような場所ですね。
例えば空港の場合ですと、羽田、成田、中部空港、関西空港などに声をかけているのですが、その中でお酒を造り、味噌醤油を造る。
出国手続きをした後飛行機を待つ1，2時間の間に日本の最後のお別れをそこで造った味噌、醤油を使った和食と共に日本酒を召し上がって頂く。
こういうことができれば、日本食、日本酒は美味しいっていう思い出を祖国に持ち帰って頂いて、興味をもっていただけると思うんです。
そして外国人が日本食に興味を持ってくれれば少しでも海外での消費が増えていくと思うんです。
魅力ある日本にするため
もう一つは、今後日本の人口が減っていく中で、経済は収縮すると思うんです。
やはりそれには外国から日本に訪れる人を増やさなきゃいけない。それだけじゃなく、国内でもっともっとお金を回していかなきゃいけないと思うんです。
今東京駅に酒造所をつくりましたが、これを全国に広めていきたいんです。
例えば東京、大阪、福岡など、旅行に行くとします。
新幹線であればのぞみに乗っていきますよね。
それが、静岡に新しい酒蔵ができたからこだまに乗って静岡に寄ってみようよと言って下車して黒はんぺんと一緒にお酒を楽しんでもらう。
今度岐阜まで行って岐阜のお酒と岐阜名物を楽しむ。
のぞみだけ人がパンパンになるんじゃなくて、こだま、ひかりにどうやって人を呼び込むかが地方再生につながると思うんです。
金山：すごいビジョンですね！
日本酒が経済を回すための一部になるってとっても面白いと思います。
勝手に杜氏さんって職人さんなんだろうとイメージ持っていましたが、ビジネスマンなんですね。
今回キャリアのスタートから沢山お話しを伺いましたが、最後に寺澤さんの人生に大きな影響を与えたものがあれば教えて頂きたいです。
人生に影響を与えたサイクルロードレース
私サイクルロードレースやってたんですよ。
25、6歳の頃から40歳くらいまでですね。
趣味なんですけどね。
他の競技と何が違うかと言いますと、一番に走っていったら不利な競技なんです。
風の抵抗を受けるので。
人生と同じで、みんな同じくらいで共存することって大切なんです。
敵なんだけどこのタイミングでは組んでやるとか。例えば私はスプリント力がないんですけど、早めに小さくアタックをかけて小さな集団にするんです。
強い選手を見抜いてコバンザメのようについていくんです。
スタートは200人いたら200番手の力なんですけど、それをどんどん絞っていくんです。
ある時には友達なんだけど、ある時は敵。
200人が30人、30人が5人、5人が3人になっていくんです。
ラストスパートを早めにかける選手もいれば、最後の一瞬で抜き去る選手もいるようにそれぞれタイプが違うんです。
私は小柄でしたので、前に選手がいれば風の抵抗を受けにくいので休める。
それぞれの特性を生かして勝ちに行くんです。
この経験は仕事や人生にとても役立っています。
ある時は日本酒業界という中で戦って、ある時は東京都酒造組合という中で戦うわけじゃないですか。
企業間の競争って、自転車の競技とよく似ているんですよ。
金山：なんだか奥が深いですね！
寺澤さんの造る「江戸開城」を頂きましたが、とてもさわやかな飲み口で私日本酒の素人ながら香りも感じられる美味しい日本酒でした。
ロードレースの経験がなかったならば、「江戸開城」は世に出ていなかったかもしれませんね！
これから益々のご発展をお祈り申し上げます。
今週は寺澤善実様に今後のビジョンについてお話しを伺いました。
次週は最後の結びとして、私が今回の対談から得た学びと気づき、そして人、組織の育成に活かすためのポイントをお届けします。
会社情報
会社名：東京港醸造株式会社
本社：東京都港区芝四丁目6番10号
事業内容：
・酒類の醸造設備、電気機械設備の設計、
・製造、 販売、 賃貸借、 輸出入、 施工、保守及び管理
