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木村 圭

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第7回 「結論から述べる」ができない人へ

2022/01/17

「結論から述べる」ことはビジネスにおいてかなり重要です。
さまざまなところで「結論から述べるようにしましょう」と言われていますが、苦手な人も多いのではないでしょうか?

それはなぜか。
実は、多くの人は『結論から述べる』の 『結論』を誤解しているからです。

そこで今回の記事では、結論から述べるの『結論』とは何かを解説します。

結論は話のオチではない

「結論から述べる」について多くの人は話の最後に言ういわゆる“オチ”を想像するようです。
しかし、この場合における結論とはオチのような最終的な答えではありません。

また、「結論を言うためには細かいことまで伝えなければならないのでは?」と考える人もいますがそれも違います。

結論とは、全体像のことです。
要約や概要ともいいます。
全体像を相手に見せ、話しのゴールを示すのが『結論から述べる』目的です。

これから自分はこういう話をする、この目的に向かって話を進めていく、といういわば予告に過ぎないため、一言で全てを言い切る必要もなければオチを言う必要もありません。

全体像を伝える意味

話というのは先に行けば行くほど深くなっていくものです。
実用書の類も、冒頭のまえがきで本に書かれている内容をざっくりと説明し、全体像を読者に見せた後に細かい説明に入ると思います。

文章である本と全てが同じというわけではありませんが、受け手の頭にすんなり入る構成という意味では、話し方も同じです。
「これから何の話をされるかわからない」というのは私たち人間にとって大きなストレスです。

例えば、大して仲良くない人に「言われた通りついてきて」と車に乗せられたら「これからどこへ連れていかれるのか」と不安に感じますよね。
一方で「今から○○に行きます。時間は△△くらいかかります」と予告されれば、大きな不安を感じることはないのではないでしょうか。

聞き手にストレスを与えない、迷わせないために、これから話す内容を予告するのが『結論から述べる』の本当の意味です。

大事なことは抽象化

伝説とされるスティーブ・ジョブズのiPhone発表時のプレゼンでも、冒頭で結論を述べています。

2年半、この日を待ち続けていた。
数年に一度、すべてを変えてしまう新製品があらわれる。
それを一度でも成し遂げることができれば幸運だが……。

アップルは幾度かの機会に恵まれた。
1984年、Macを発表。
PC業界全体を変えてしまった。
2001年、初代iPod。
音楽の聴き方だけでなく、音楽業界全体を変えた。
本日、革命的な新製品を3つ発表します。

1つめ、ワイド画面タッチ操作の「iPod」。
2つめ、「革命的携帯電話」。
3つめ、「画期的ネット通信機器」。
3つです。タッチ操作iPod、革命的携帯電話、画期的ネット通信機器。iPod、電話、ネット通信機器。 iPod、電話……おわかりですね?
独立した3つの機器ではなく、ひとつなのです。

名前は、iPhone。
本日、アップルが電話を再発明します。
(出典:logmi Biz)

何と言ってもインパクトが大きいのは「電話を再発明します」という部分。
それまで日本でいうところのガラケーが一般的だった世界に、物理ボタンを排除したスマートフォンを発表したことはまさに「再発名」の名に相応しいものでした。

もしこのプレゼンで本当に結論を述べてしまうなら「アップルは電話やインターネット、音楽機器がすべて一緒になったiPhoneという電話を作りました」ということになるでしょう。

しかしそれは最終的な答えという意味での結論であって全体像ではありません。
ジョブズは全体像を伝える意味として「電話を再発明した」という言葉を使い、聴衆に「その先を知りたい!」と思わせているのです。

ここで大事なことは結論を抽象化して述べていること。
ジョブズは「iPhoneを作った」という具体的な製品や行為を「電話を再発明した」という抽象的な言葉に言い換えました。

抽象化というのは言ってしまえば、細かいことを一言でまとめあげること。
「つまり〇〇だ」ということです。

普段私たちがするスピーチやプレゼンにジョブズのような表現力を求めるのは少し違うかもしれません。
しかし、物事を抽象化して「つまり〇〇だ」とまとめあげる力は「結論から述べる」力と同じです。

そのため、日ごろから複数の具体的な物事の共通点を探したり俯瞰(ふかん)して見たりするクセをつけることをおすすめします。