前回はシェイクスピア作品「ヴェニスの商人」のシャイロックについて、私なりに分析してきました。
今回はレジリエンス応用編の第四弾として、シェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」の主人公ジュリエットのレジリエンスについて検討してみます。
「ロミオとジュリエット」は、「ウエスト・サイド・ストーリー」の原作
「ロミオとジュリエット」を知らない人はおそらくいないというくらい、シェイスクピア戯曲の中でも有名な作品です。
シェイクスピア作品はさまざまな形で上演されリメイクもされています。
以前も触れたように、黒澤明監督が「リア王」からヒントを得て「乱」を世に出しましたが、その他にも黒澤監督は、「蜘蛛巣城」もシェイクスピアの「マクベス」の翻案であることも良く知られています。
ブロードウェイミュージカルから映画化された「ウエスト・サイド・ストーリー(物語とも)」は、シェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」を原案としています。
女優ナタリー・ウッドの出世作ともなりました。
「ロミオとジュリエット」のストーリー
この作品は思春期の少年・少女の多感で不安定で純粋な心情を表現した名作といえるでしょう。
「ロミオとジュリエット」は、たった5日間に起こる悲劇を描いています。
ヴェローナの名門キャピュレット家のジュリエットと、もう一方の名門モンタギュー家のロミオがパーティーで出会い、互いに一目惚れして恋愛に落ち、その後結婚を誓います。
ところがお互いの家は敵対していて、結婚が出来そうにありません。
両家が敵対するためのさまざまな騒動に巻き込まれ、ロミオは人殺しまでしてしまいます。
このままでは結ばれる可能性はありません。
二人に同情的であった神父がそれを見かねて秘密裏に二人を結婚させます。
そして両家を説得しようと「魔法の薬」を使ってジュリエットに死んだふりをすることを提案します。
ところがロミオは薬を飲んで一時仮死状態になったジュリエットを見て絶望し、自ら命を絶ちます。
仮死状態から正気に戻ったジュリエットは、自分の夫ロミオが絶命している姿を見て、自らも死を選びます。
ジュリエットのレジリエンス
今回も以下の代表的なレジリエンス要素を用いて分析をします。
1.自己効力感
2.感情のコントロール
3.思い込みへの気づき
4.楽観
5.新しいことへのチャレンジ
以下、あくまでも筆者なりの分析であって、他の視点からも分析してみるのも面白いでしょう。
自己効力感はある程度、高いと言えるでしょう。
意思が強く、簡単にはくじけない性格です。
キャピュレット家とモンタギュー家の敵対関係を克服しようとあらゆる努力をします。
絶えずイニシアティブをとり、秘密裏にロミオと結婚します。
非常に意志が強い少女として描かれます。
残念ながら、冷静で粘り強く時期を待つことをせずに、悲劇に至ったのは14歳前後の多感な少女としては同情出来る部分が多々あります。
感情のコントロールは、苦手ということが言えるでしょう。
しかし、物語が始まった当時の彼女は14歳になる直前であり、この時期の少女特有の純粋さもあり感情のコントロールが利かないという状態に自らを陥れます。
思い込みへの気づきという面でも、苦手であったと思われます。
一度思い込んだら猪突猛進というか、視野が狭くなったまま行動に移ります。
それが悲劇の原因になることは残念ですが、作品としては悲劇性を引き立てています。
楽観という視点からも、敵対する名門両家の状況を考えるとあまり感ずることは出来ない状況であったのだろうと思われます。
彼女のレジリエンスというよりも、この戯曲の中での彼女はそういう状況にあったということでしょう。
新しいことへのチャレンジという視点では、秘密裏にロミオと結婚する、神父の魔法の薬を受け入れるなど、どんどんチャレンジを続けます。
次回は「真夏の夜の夢」の登場人物について分析してみましょう。
レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。
また、シェイクスピアに関するビジネス活用のご参考として、拙著:「できるリーダーはなぜ「リア王」にハマるのか」(青春出版)があります。
この書籍はシェイクスピア作品を通してビジネスの現場にどう活かしていくかを検討するために書かれました。
toshiro@miyamacg.com (筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ