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深山 敏郎

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第178回 困ったときの老荘だのみ エピソード78

2024/11/12

毎回老子の言葉をひとつずつご紹介しています。
コラムの177回目では、「兵強ければ滅び、木強ければ折る」を検討してきました。老子は言います。
「人の体は生きている間は柔らかい。だが死ねば堅くこわばる。草木は生きている間は柔らかい。だが、死ねば堅くひからびる。弱小は強大に勝つ。これが自然の法則である」と。

今回は「余りあるを損して、足らざるを補う」です。
老子は言います。
「天道のはたらきは、あたかも弓に弦(つる)を張る動作に似ている。弓に弦を張るには、上端を引き下げ、下端を引き上げ、長い方(弓)を縮め、短い方(弦)をひっぱる」と。

「余りあるを損して、足らざるを補う」とは何か

今回は老子の言葉「余りあるを損して、足らざるを補う」の意味をご一緒に考えましょう。

老子は言います。
「天道はこのように、あり余るものを減らし、足らぬものを補う」と。

「余りあるを損して、足らざるを補う」は現実に行われているか

この言葉は老子の理想としている国のあり方、人のあり方です。
老子によれば、現実には逆であって、「足らぬ者からしぼり取っては、あり余る者に貢いでいる」とのことです。

「ショック・ドクトリン」という著書をご存じの方も多いことでしょう。
カナダのジャーナリスト ナオミ・クラインのこの著書(2007年)によると、戦争・テロ・パンデミックなど国家が危機状態陥った時、つまり市民が茫然自失に陥った時に、平時では考えられないような政策案が決議され、実行されるというものです。
例えば、テロリストの可能性のある個人を国家が盗聴することを合法とする、軍事予算を大幅に増額する、市場原理主義の名のもとに資本家のやりたい放題を放置するなどです。
結果として、時の政府に近い投資家たちは自分たちが描いて政府に働きかけている「変化のシナリオ」を悪用して大胆に投資をします。
結果として大いに儲けます。
こうして豊富な資金力がある者をさらに潤わせます。
その一部が政府要人への賄賂に使われることは想像にかたくありません。

老子が言うのは、本来国家というものは人民が困窮に陥っている時には、それを救うためにあり余る経済力がある者に一時的にでも我慢してもらって困窮を救う政策を取るべきであるということです。

この「余りあるを損して、足らざるを補う」という言葉は老子の嘆きのように聞こえます。

本コラムが私たちの日々の悩みを和らげ、深く自省するきっかけになれば幸いです。

「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。

レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。

(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
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