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深山 敏郎

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第162回 困ったときの老荘だのみ エピソード62

2024/07/23

毎回老子の言葉をひとつずつご紹介しています。
コラムの161回目では、「小鮮を煮る」を検討してきました。
老子は言います。
「大国を治めることは、小鮮、つまり小魚を煮ることのようである」と。
「道」に従った無為の政治をすれば、鬼も出ず、人民は聖人の存在も意識しなくなるということです。

今回は「天下の牝(めす)」です。

「天下の牝」とは何か

今回は老子の言葉「天下の牝」の意味をご一緒に考えましょう。
老子は言います「大国は天下における「牝(めす)」のごとし、と。
川に例えれば下流であり、諸国が合流を求めます。
諸国はこうした川の下流に沿い合流していきます。

老子の言葉を借りれば、「女性はみずから手を下すことなく男性を意のままにあやつる。それは女性が受け身であるからこそ出来ることである」のです。

大国と小国は互いにへりくだるべし

ここでいう大国とは、強いもの、優れたもののことであり、小国とは弱いもの、優れていないものであるということです。
老子はつねに「弱者」を高く評価します。
自らの力だけでは何もすることが出来ず、絶えず受け身でいることこそが老子の理想とする生き方なのです。

強い立場の者がヘリ下り、弱い立場の者も自然にへり下ることが老子の考える理想なのです。
そのためには「道」というものが主張せず、相手に従おうとするという性質を理解しておくことが必要です。

ビジネスにおいてもまず「牝」であろうとする

ビジネスにおいてこの「自然の摂理」を理解するということは、「自らがでしゃばらず、受け身でいる」ということは非常に難しいことです。
しかし相互にそれが出来た時に互いが理想とする結果を得られるのではないでしょうか。
自らの立場ばかりを主張していては、ビジネスはうまくいきません。

強い立場にいる者も、それはいっときのことであり、常に強いわけではありません。
弱い立場にいる者も同様です。
従って、まずは強い立場の人間や組織がへり下ることによって、弱い立場との協働が出来るのです。

こうしたことを日頃わたしたちは忘れがちです。
だからこそ、こうして老子の言葉が重みを持つのでしょう。

本コラムが私たちの日々の悩みを和らげ、深く自省するきっかけになれば幸いです。

「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。

レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。

(筆者:深山 敏郎)
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