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益田 和久

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第149回 身近なところで「決断」をする

2024/01/11

昨年、鉄道会社のDXプロジェクトに参加させていただいたおかげで、DX関連の相談が増えてきました。
ペーパーレスやチャットツール、オンライン会議の推進と内容は多岐にわたります。
比率としては、身近な業務のプロセスやアウトプットのデジタル化が多いですかね。
中には「そもそもDXとは」とか「何から始めればいいのか」といったお問い合わせもありますが、至極当然なお悩みかと思います。

このコラムでも何度か触れましたが、DXとは端的にいうと「デジタル技術を活用して儲かるしくみをつくる」ことです。
この「儲かる」という点からすると、収入を増やすか支出を減らすことになりますので、着手しやすいのは業務のデジタル化によるコストダウンになるのだと思います。
DXとは中長期的な視点をもって働き方やビジネスモデルを変革することですので、理想的には全体像やシナリオを描いた上で推進していきたいところです。
ただそれができるのは、大企業やIT系、コンサルタント系企業に限られています。
中小企業や各種団体はできるところから着手するのが一般的で、企業体力や必要に応じてデジタル化を徐々に積み上げていくようになります。
私的にはそれでいいと思いますし、優先順位を見極めていくことが重要ではないでしょうか。

前置きが長くなりましたが、そんなDX案件の一つとして、とある団体のペーパーレス化の相談を受けました。
以前より紙書類の多さは指摘しておりましたが、A3用紙の使用や両面印刷等の対応くらいしかしておらず、そもそものペーパーレスの概念すら理解されておりませんでした。
ところがここにきて、トップダウンで大きな方針変更。
原則として会議書類や成果物等は印刷しないことになりました。
念のために申し上げますが、印刷をしないことは先に決まっています。
私の役割は、その意思決定によって当面混乱する(であろう)現場に対して、どのような指導をし、スキルアップをさせていくかということです。

まずは、今回の意思決定に対してヒアリングをしてみたのですが、その反応は意外なものでした。
ベテラン層の方も、ペーパーレスは社会情勢からみても当然のことだし、むしろ意思決定が遅いと感じていました。
ただ一方で、いきなり印刷をしないようにというのもいかがなものかという不満も数多く出ました。
作業日程表のようなものがあるのですが、それは追記をすることも多く、これは印刷物でないと困るようなのです。
タブレットやスマホで閲覧はできますが、スタイラスペンなどで書き込んでいくというスキルやツールも整っておりません。
また連絡はLINEが中心ですので、PDFやJPEGもしばらくすると期限切れになってしまいますので、これをどこに保存するのかを各現場で決めていく必要があります。

このように書いていると、トップの対応がかなり荒っぽいように見えますが、トップも何も考えていないわけでなく、現場の反応や対応状況をみながら有効策を模索している状況なのです。
賛否両論ありますが、先に大きな決断をしてから、細かなことを考えていくのも一つのやり方です。
荒療治的な進め方をすることで、やることの優先順位も見えてきますし、現場の意見や要望、アイデアも出てきやすいのだと思います。

今回改めて気づいたのは、迷ったときこそ、改善の4原則「排除・結合・交換・簡素化」を試してみるべきだということ。
物事を進めていくには入念なシミュレーションは大事ですが、それはゴール設定ができている場合です。
全体像やシナリオが描きにくい場合には、排除(やめる)・結合(組み合わせる)・交換(入れ替える)・簡素化(手間抜き)という観点で、身近なところから着手してみようと再確認した今日この頃です。