コラムの128回目では、老子の言葉「大制(たいせい)は割かず」を検討してきました。 「道」を知る者は立場を離れて万物を包摂すると老子は言います。
今回は老子の言葉「取ろうとすれば失う」をご紹介します。
「取ろうとすれば失う」とは
老子は、天下を取ろうとしていろいろと画策する者に天下を取った人はいない、といいます。
また、天下は作為どおりにはいかないとも老子はいいます。
例えば天下をまとめようとすれば、まとまらず、追いかければ逃げてしまうというのです。
これは天下という例えで組織における私たちの態度を反映しているのではないでしょうか。
聖人はこだわらず、自然にしたがう
世の中には必ず対立する面があります。
例えば「先」に対しては「後」、同様に緩急、強弱、上下など両面があります。
このような両面を理解し、作為をすてて自然に任せるということが聖人の生きる態度です。
聖人はものごとにこだわらず、自然に従おうとします。
そう考えてみると、老子のいう「聖人」がこの世に居るのかどうかが気になるところですが、それをここで論ずることは重要ではありません。
それよりも重要なことは、老子の言葉から我々が自らの愚かさに気づき、どのようにその愚かさと付き合っていけばよいかを理解した上で実践するということでしょう。
私たちは、いつも喜怒哀楽、特に深い哀しみや自分では結論の出せない悩みに支配されることがあります。
そうした折に、老子の言葉を少しでも思い出すことが、悩み続けないことにつながるのではないでしょうか。
本コラムが私たちの日々の悩みを和らげ、深く自省するきっかけになれば幸いです。
「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。
レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。
(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
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