コラムの114回目では、老子の言葉「『道』のはたらき」を取り上げました。 老子は「道」は蝕知不可能であり、全貌はわからない本質のようなものであるということをご紹介しました。
今回は老子の言葉「大人物」をご紹介します。
「大人物」とは、捉えどころのない人物のこと
老子の言う「大人物」は、捉えどころのない人物のことです。
「道」そのものが形もなく、音もない蝕知不可能な存在であり、五感で捉えることができません。
その「道」を体得した人間が「大人物」であるならば、その存在も捉えどころがない、底知れぬ深さを持った人物ということになります。
「大人物」の特性の一部
老子の言う「大人物」は、次のような特性を備えた人です。
・万事に慎重であること
・消極的であること
・重厚であること
・ものごとに執着せぬこと
・飾り気のないこと
・無心なこと
少し分かりづらいと思われるのは、「消極的であること」や「重厚であること」といった特性でしょう。
老子は次のような例を用いて説明しています。
「消極的であること」は、あたかも強国に囲まれて孤立した弱国のごとくと言っています。
また、「重厚であること」は、あたかも招かれた賓客であるがごとくと言っています。
どのような立場でも対応し、自己を失わない人という意味に取れます。
これらは老子のいう「大人物」の特性の一部ですが、「大人物」が「道」を体現した人であるならば、「大人物」の全体像は把握できず、その特性の一部分だけを現わしているということになります。
本コラムが私たちの日々の悩みを和らげ、深く自省するきっかけになれば幸いです。
「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。
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(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
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