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深山 敏郎

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第103回 困ったときの老荘だのみ エピソード③「小賢しさと欲望は自己を見失わせる」

2023/06/06

前回このコラムの102回目では、老子の言葉「美は同時に醜、善は同時に悪」を取り上げました。

小賢しさと欲望は自己を見失わせる

老子は、人の賢愚は相対的なもので、賢を重視することをやめれば不要な競争はなくなると言っています。
また、金銀財宝といった手に入れにくい品物の価値も、相対的なものであり、それらを珍重することをやめれば、盗みはなくなると言います。
欲望を起こさないようにするならば、人は自分の本性(ほんせい:human nature)つまり、人間が普遍的に持っている思考、感覚、行動などを見失うことがないと言います。

日々の生活に必要な食糧や水、衣類、住居、家族あるいは愛する者などがあれば、それでよいではないですか、という風にも解釈できますし、本来これらが満たされていれば人間は幸せであり続けられる、とも取れます。

他者と比べることで、「自分の車は中古車のポンコツで、隣家の車は新品でピカピカの高級外車である」といったことが、優劣を表すようなことはなくなるということでしょうか。

競争に明け暮れ、欲望の奴隷になるな

老子が生きていた時代(春秋時代)、世の中は乱れ、大国「晋」が三国に分裂し、絶えず小国が覇権を争っていたといわれています。
春秋時代はまた、後の戦国時代と一括して、春秋戦国時代ともいわれています。
日本で言えば、戦国時代にあたることでしょう。

世の中は乱れ、絶えず隣国と争い、領主は少しでも領地を広げようという野望から争いを起こしていたことでしょう。

現代の経営、特に日本国内の企業になぞらえてみると、コロナ禍が一応の終息に至ったため、ほぼあらゆる業種で人手不足が蔓延しています。
人の奪い合いという戦争をしているといっても良いでしょう。

そうした時に、経営陣はその戦の渦中で思考能力を停止してはいけません。
自社の本業は何か、どういうお客様にどのような奉仕をすることが求められているか、そして人出不足であれば、それを解消するさまざまな方法を検討する「良い機会」と捉えてみてはいかがでしょうか。

「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。

レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。

(筆者:深山 敏郎)
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