ビジネス書は週2〜3冊のペースで読むようにしています。
書店に行って立ち読みしてから買うときもあれば、新聞や雑誌の記事で紹介されていたものや仕事仲間から薦められたもの、面白そうだと思ったものは即買いしてまず読んでみます。
最近印象に残っている1冊が、脳科学の第一人者である川島隆太先生著書の「オンライン脳」。
科学的実験結果の観点からオンラインコミュニケーションの限界を指摘しています。
オンラインとの向き合い方のコラムを書いている私としては、考えさせられるところがありました。
実験内容は「対面コミュニケーション」「オンラインコミュニケーション」それぞれにおける「脳の活動」の違いです。
実験で調べたところ、対面の会話では、参加者の間で脳の活動がお互いにシンクロする ”脳の同期” が観察されました。
一方オンラインの会話では、脳の同期は生じなかったそうです。
脳の活動が同期することは「共感が生まれ、協調や協力ができること」を意味しています。
言い換えると、脳の同期が起こらないオンラインコミュニケーションでは、脳は特に活動せずまともなコミュニケーションになっていないということなのです。
オンラインコミュニケーションが共感や協調に結びつかない原因として2点挙げていました。
要約すると以下のようなことです。
一つは、コミュニケーションの基本の一つに「相手の目を見る」ことがありますが、オンラインではそれがうまくできないこと。
うまくできないことにより、会話に違和感が生まれてしまう。
そして脳はこの違和感を、私たちが感じる以上に大きなものとして受け取り、対面(コミュニケーション)では普通に起こる反応を示さない。
オンラインで会話をするときに、相手の顔をよく見ようとすれば、カメラのレンズではなくモニターの中央部分を見なければならない。
するとどうしても、自分の顔を撮っているカメラから視線がそれるので、相手から見た自分はそっぽを向いているように見える。
もう一つは、一般的なオンラインでは通信速度の問題があり、映像と音声が微妙にズレてしまうこと。
オンラインの動画はなめらかでなく、音声も映像と微妙にズレているため不自然なものと感じる。
オンラインで会話をする時、脳はモニター越しの相手を「画像が粗い電子的なパラパラ漫画」として見ている。
相手の口の動きが、スピーカーを通して聞く声と微妙にズレている。
要するに、オンラインコミュニケーションで脳が見ているのは、リアルなものとは受け取りがたい“とても奇妙な音声付き動画”である。
人は粗い動画と微妙にズレた音声をうまく統合して、一応「リアルなコミュニケーション」らしきものとして認識している。
でも脳は、違和感の強い不自然なものとしか認めていない。
そうであれば、対面して自然なコミュニケーションをする時に生じる脳の活動が生じるはずがない。
よって、脳の同期が起こらない。
上記2点について、確かに言われてみればそうかもしれません。
また脳科学の観点からの実験ですので、これは素直に受け容れるしかないかなと(苦笑)一点目の相手の目を見るという点については、PCの画面に貼り付けられるような小型カメラもリリースされています。
二点目についてはPCスペックや通信環境の要因が大きいので一概にはいえませんが、現時点ではそう感じるのも多いのではないでしょうか。
とはいえ、オンライン環境や各人のリテラシーも日々アップデートしていますので、将来的な視点からすると決して悲観するものでもないかなと思っています。
これ以外にもSNSやスマホが脳機能に与える弊害への警告もありました。
脳にダメージが蓄積され脳本来のパフォーマンスを発揮できなくなった状態を「オンライン脳」と呼ぶそうです。
誰でもいつでも、このオンライン脳になる可能性がある現在。
この3年間で当たり前のように定着してきたオンライン環境。マスク自由化や5類変更で対面の機会も増え、コミュニケーションの取り方は新しいステージを迎えました。
これまでの約3年を総括して、これからの適切な使い方や向き合い方を考えることも必要だなと感じた今日この頃です。