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益田 和久

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第110回 前提条件

2023/04/13

新入社員研修の登壇や準備が続く慌ただしい毎日の4月。
この過密なスケジュールと向き合うピリピリ感とフレッシャーズとの接点から生まれる新鮮な感覚が、新年度のスタートダッシュを後押しします。
今年度の新入社員研修は、ほとんどが対面形式になりましたが、講義中のマスク着用は(ほとんどの会社が)続いているので、受講者の緊張感や理解度が把握しづらい状況は変わりません。
あとはコロナ禍で黙食やイベントの声出し禁止を強いられ、声を発さない生活が長かったことが原因かわかりませんが、新入社員の声が小さいような気がします。
新入社員は、元気が一番の売りですから、張りのある、元気いっぱいのあいさつや話し方を期待したいところです。

そんなわけで、新入社員が元気なあいさつをするという前提は一昔前の話になりました。
そして、コロナ禍当初に政府が示した「新しい生活様式」により、これまでとは違った前提で物事が進んでいることを感じます。
先週寄稿した給与のデジタル支払もしかり。
仕事も私生活もベースは全てデジタル(オンライン)になっています。
研修会場で、新聞を広げて読んでいる新入社員は見当たりません。
研修中の休憩時間も、同期の人と話すより、スマホを見ている人のほうが圧倒的に多いような気がします。

先日ランチタイムにファミレスで食事をしていましたら、新入社員(らしい感じの)4人連れが入店してきました。ボックス席に座り、タッチパネルを回しながら全員が注文したら、特に会話をすることはなく、各人がスマホを見ながら注文したメニューを待っていました。
食事がきてもスマホを見るのは続いていて、最後の人が食べ終わったときに、4人で顔を見合わせて「さあ、帰ろう」と仲良く連れ立って帰っていきました(笑)
かなり特殊なパターンのような気もしましたが(苦笑)彼らからしたら、これが日常なのかもしれません。

また、仕事も私生活もスマホが中心になりつつあることで、少し驚いたことがありました。
メモの取り方です。新入社員にとって「メモを取る」ことは、早い段階で習慣づけておくべきですし、合理的・効率的なメモの取り方も習得したいと思っている人は多いと思います。
常に肌身離さず、手の平サイズのメモ帳を持ち歩いているのが新入社員というのがこれまでの常識だと(あくまで私見ですが)私は思っていました。

ところが、先日新入社員研修の打ち合わせをしていたときに、親しい講師から「この会社はスマホでのメモは許可していないのですか」といった質問がきました。
一瞬、何の質問かと思いましたが、会社によっては(業務用の)スマホでメモをとることが標準になっているところもあるようなのです。
確かにスマホでメモをとるほうが、フリック入力に慣れた若者にとっては、書くよりもやりやすいかもしれません。
手書きのメモ帳ですと後から見返したときに「何て書いたんだっけ?」ということも時々ありますが(苦笑)、スマホのメモ帳ならそんなこともありません。
後から検索もしやすいですし、スマホなら常に携帯もしているはずです。
新人教育という観点から考えると、スマホでメモさせるほうが圧倒的に合理的なのかもしれません。

私自身が「新人がメモをとるときは手のひらサイズのメモ帳」ということが当たり前だと思い込んでいましたし、これまでお客さまや研修受講者からも質問されたこともありませんでした。
だからこそ、今回「新人がスマホでメモをとってはいけないのか」という質問は、仕事の前提条件を見直す、再設定するという点では大きな気づきがありました。

この4月は、これまで自粛していた新入社員の歓迎会も(感染対策を十分にした上で)再開する企業が増えてきました。
2023年度は新しい働き方が本格的に始まる予感がします。
これまでの常識や慣例に囚われず、より合理的、効率的な働き方を提案できるように、ゼロリセットしたものの見方をしていきたいと思う今日この頃です。