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星 寿美

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第3回 もしも社員がトラブルメーカーだったら?

2021/05/02

今回は本当にあった、大型飲食店で、30代の店長を困らせる、40代主婦パート職員、吉田さん(仮名)の例です。

吉田さんは仕事面では問題のない職員さんでした。
しかし、同僚と対立したり、何かと店長に相談しては大泣きするというパフォーマンス型のトラブルメーカーでした。

相談内容は『誰々がこんなことをした!』『私はやっているのに、他の人はやってくれない!』などの愚痴や悪口です。
最後には泣き出してしまうので、店長は、どう対応していいか分からず、ほとほと困ってしまっていました。

行動には必ず理由がある。

そこで私は「吉田さんの困り事を一緒に解決しますよ!」という役割に徹して、お話を伺うところからスタートしました。

すると私に対しても愚痴や悪口が止まりません。
そこで、気が済むまで訴えを吐き出させることにしました。
私に対しても同じように大泣きし始めましたが、泣き止んで落ち着くまで待ちました。

そして「今、お話してくださった内容をちゃんと理解したいので、違っていたら教えてくださいね。」と断って、いま、本人から聞いた通りの話をまとめます。

「誰々がこう言うんですね。」「誰々は〜をしないんですね。」と言うふうに、聞いた話をそのままお伝えしていきます。

この確認の際にも感情を訴えてこようとしましたが、その度に落ち着くのを持って、内容を淡々とまとめていきました。

吉田さん側からの一方的な話ですから、もちろん、それが真実かどうかはわかりません。
事実をかなり歪曲している可能性もあります。

けれど、吉田さんからは、そう見えている(感じている)と言うことで、訴えを全て聞き取ります。

なぜ、感情を掘り下げるべきなのか?

聞き取った後に、それらの事柄、一つ一つに対して「これを言われて、どんな気持ちになったのですか?」「その時に、本当はどう行って欲しかったのですか?」と『感情』を聴きます。

「すごくムカついた!すごく悲しくなった!はぁって思った。」などの感情を言語化していただき、次に「どうして、すごくムカついたんでしょうね?」と感情を掘り下げていきます。

なぜ、そんなことをするのか?というと。

『事実かどうか』『どっちがいい悪い』などは全く関係なく、何かに触発されて出てきた、怒りや違和感などの『マイナス感情』を掘り下げることで潜在意識レベルの、本人も言語化できていない、本当の『想い』に繋がるからです。

その人が本当に感じている大切な想いや価値観を知るために、感情を聴き、掘り下げるのです。

それをして、やっと本質的な解決の糸口が見つかります。
怒りなどのマイナス感情は、本当に大切にしている想いや価値観などが蔑ろにされた時に出てくるものだからです。

吉田さんの場合は夫との関係にストレスを抱えていて、さらにそれが幼少期の親との関係に紐づいていました。

幼少期に親に『認めて欲しかった』感情が、大人になって、夫に、また仕事上では店長に、相手を変えて同じパターンを繰り返していたのです。

吉田さんは、感情を掘り下げて、本当に大事にしている『私は私のままでいいんだ!それを認めてほしい!』と言う想いを言語化することができました。

これまでは、その部分(幼少期からの切実な想い)から、マイナス感情(愚痴や悪口)になることに『無自覚』だったので、そこに気づいただけで8割方解決なんですよね。

自分自身との関係を見直すことで解決

親に認められたい、と言う欲求を満たされないまま大人になって、親以外の人に、そこを埋めてもらおうと無意識に問題行動を起こしていた吉田さんでした。

その心のからくりと、自分の本当の想いに気づき、さらに『自分自身との関係を見直す。』と言うことに取り組んでいただきました。

実は『認めてほしい!』と他者に承認を求めていましたが、一番認めていなかったのは自分自身です。

自分を丸ごと受け入れて認めていたら、他者にはどう思われようが、それほど問題はないんですよね。

自分自身との関係が、そのまま他者との関係に反映します。自分には価値があることや、自分なりに頑張っていると労うことなどをお伝えして、実践していただきました。

今回、私がやったことは
①吉田さんの感情を100%尊重して話を聴き、
②本当の想いを言語化することをお手伝いし、
③さらに自分自身との対話を日々の中で練習していただきました。

すっかり自分自身との関係がよくなった吉田さん。
数ヶ月後には店長や同僚とも、気持ちのいいコミュニケーションが取れるようになりました。

事実はどうかとか、いい悪いなどには触れずに、100%感情を尊重する関わり方をすることで解決した例です。

このように、パフォーマンス型のわかりやすいトラブルメーカーは比較的解決しやすいと感じています。
次回は、サイレント型トラブルメーカー、一見誰がトラブルの元なのか分からない例をお伝えします。