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伊藤 洋

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第20回 東北の服づくり②

2021/08/30

皆さん、こんにちは。今日も東北の服作りのお話しをします。

前回は、気仙沼のデニム工場のオイカワデニム、山形県南陽市の靴メーカ宮城興業でした。

皆さんはポールスミスという英国のブランドをご存知でしょうか?
アパレル以外にも財布やバッグなどのアパレル雑貨も多く企画・販売しています。

実はポールスミスは青森県の田舎館村というところに毎年必ず来ていました。
田舎館村の株式会社サンラインという縫製工場でポールスミスのメンズジャケット、それも日本で販売するのではなく、ヨーロッパで販売するジャケットを作っているんです。

なぜそうなったかというと、ポールスミスのデザインした、あるジャケットを生産する工場を探している時、ヨーロッパはじめ各国の生産工場がことごとく「それは作れない!」「技術的に無理!」と引き受け先が見つけられないでいた中、その田舎館村のサンラインが「うちはやれます!」と言ってその仕事を受注しました。

実はサンラインもそんな細かいディテールの縫製なんかしたことは無かったんですが、とにかく何でも引き受けなければ会社が立ち行かないということで、所謂“ハッタリ”をかましたんだそうです。
内心ヒヤヒヤだったそうです。

で、工場のおばちゃんがその型紙と仕様書を見て縫い始めたら、あっという間に作っちゃったんですって!
それを見たポールスミスが感動して、このメンズジャケットはここでしか作らない!と決めて、」その後もポールスミスのメンズジャケットは青森県の田舎館村の(株)サンラインで生産されています。

岩手県花巻市にある日本ホームスパンという会社は家族でニットを編んでいます。
ここではシャネルのニットを編んでいます。

私がお邪魔して工場を見学しながら写真を撮っていたんですが
突然「伊藤さん、これは写真ダメです!」と言われました。
「どうしてですか?」と聞くと「この生地はシャネルが使うからです」と。
「伊藤さんがこの写真をSNSでアップして、もしシャネルの関係者がこれを見たら大変なことになる」と。

シャネルのニットや生地を日本で生産しているということを隠しているんだそうです。
「え!それちょっとおかしくないですか?何で生産地域が日本だとダメなんですか?」
「シャネルはやはりヨーロッパ産というイメージを保ちたいんだそうです。でも技術は日本の東北の方が何倍も優れているんです」と悔しそうに話してくれました。

アパレル製造の技術は日本・東北は世界一だと僕は思っています。
日本にいれば、日常のサービスや国内生産の商品を当たり前に使っていますが、実は、もの凄い優れたものなんです。

自分の良さは自分には見えないんです。

ちなみに、その翌年シャネルはシャネルブランドのニットの糸や生地は日本で生産していることを公表しました。