先日、日本経済新聞に「ローソンが都内に『よろず相談店』 スマホや行政、地域のハブに」という記事が掲載されました。ローソンが東京都日野市のUR賃貸住宅・高幡台団地に、「ハッピーローソンタウン日野高幡台店」を開いたという内容です。店舗面積は通常の6割増しとなる338平方メートル。店内には相談ブース「Pontaよろず相談所」を設け、暮らしや通信、電気やガスといった生活の困りごとを、事前予約なしで専門スタッフにオンライン相談できるようにしました。日野市役所とも連携し、市民生活に関する相談にも応じるといいます。その横には「AIサポーター」と呼ばれるサイネージが置かれ、行政や地域の情報をAIアバターが音声や画像で案内する。さらにイートインスペースには八人が座れる小上がりを設け、高齢者向けの健康イベントやワークショップを開くそうです。1970年に建設され、900戸を超えるこの団地では、高齢化や過疎化といった地域課題が鮮明になりつつあるといいます。
読みながら、これは実に未来志向で、画期的な取り組みだと感じました。
コンビニといえば、かつては若者やビジネスパーソンが使うもの、というイメージがありました。しかし住宅街の店舗に限れば、今はむしろ高齢者の利用のほうが多いのではないでしょうか。データを取ったわけではありませんが、鹿児島で暮らす高齢の父も、しょっちゅう近所のコンビニに出かけています。年配の方が大型スーパーまで足を運んでまとめ買いをする機会は、そう多くないはずです。買い物難民という言葉は地方の問題として語られがちですが、決してそうではありません。今回の日野市の団地のように、かつて都心のベッドタウンとして発展した場所にも同じ構図があり、私の自宅近くの団地もまさにそんな様子です。高齢化が進む社会において、コンビニは重要な生活インフラになりつつある。そう考えると、この再定義は実に理にかなっています。
とりわけ興味深かったのが、AIサポーターです。一見、最も高齢者が苦手としそうな仕組みですが、使い方さえ慣れれば、需要は相当にあるはずです。本コラム第277回で、話しかけるだけで用事が済むような仕組みこそ、本来は情報弱者と呼ばれる方々にとって大きな福音になると書きました。タッチパネルに対応し、誰でも簡単に使えるようにしたという設計は、まさにその思想の実装だと思います。
そしてもう一つ、小上がりのスペースです。ここでイベントを開くというのですから、たとえばスマホ教室をやってみてはどうでしょうか。第270回で東京都のTOKYOスマホサポーター制度に触れた際、身近に継続して教えてくれる人がいるかどうかが活用の分かれ目になると書きました。第285回では、大手三社の携帯ショップが市区町村の四割で姿を消しつつある現実を取り上げました。相談の結節点が街から失われていくなかで、二十四時間開いているコンビニがその役割の一部を引き受けるのだとすれば、これほど心強い話はありません。買い物のついでに立ち寄れる場所で新しい使い方を覚えられれば、生活そのものの幅も広がっていくはずです。
記事には、団地の住民に専用タブレットを貸し出して遠隔で注文を受け、従業員が即日配達するデリバリーの実証実験を始めるという記述もありました。竹増貞信社長の「コンビニは『変化対応業』だ」という言葉も紹介されています。同様の団地は全国に2000近くあり、2030年までに100店規模を目指すそうですから、これは一店舗の実験にとどまる話ではありません。
ただ、ここでひとつ思うことがあります。インフラをつくれば、それだけで成立するというわけではありません。「ハッピーローソンタウン」という名称は、単なるサービスではなく街そのものを変えていくという意思の表れのようで、私はとても良いと感じました。しかし、箱を用意することと、そこに人が集い、暮らし方が変わっていくこととの間には、まだ距離があります。その箱を軸にして、人の考え方や動き方が変わって初めて、構想は実を結びます。デジタルは土台であり構造であって、本質はやはり人にある。本コラムで繰り返し書いてきたことが、ここでもそのまま当てはまります。
弊社は自治体のお仕事もいただいており、民間企業にデジタルの使い方をお伝えする機会も多くあります。ならば、その両方の側面から、こうした場に何かしらお役に立てることがあるはずです。街の小さな店が、地域のハブへと生まれ変わっていく。その転換を、外から眺めているだけで終わらせたくない。そんなことを考えている今日この頃です。