カップヌードルといえば、熱湯を注いで3分。そんな長年の常識を覆す商品が、この夏、話題を呼んでいます。
日清食品が数量限定で発売した「冷しカップヌードル ピリ辛キムチ味」と「冷しカップヌードル 鶏塩レモン味」です。冷水を注いで5分待つだけで食べられる、カップヌードル史上初の冷水専用商品。開発には5年を要し、独自の「コールドリハイド製法」は特許も取得しています。
販売数量は公表されていませんが、1~2カ月は持つと見込んでいた当初の供給分が、わずか1週間で完売したとのこと。
このヒットは、単に「冷たいカップ麺がおいしい」というだけではなさそうです。「本当に冷水で作れるのか」「どんな味なのか」。そんな一度は試したくなる気持ちが、購買を後押ししたのでしょう。消費者は商品だけでなく、驚きや発見、誰かに話したくなる体験まで買っているのです。まさに「話題を食べる消費」といえます。
さらに注目したいのは、値下げではなく、「これまでなかった使い方」によって新しい価値を生み出した点です。猛暑が続く日本はもちろん、年間を通して暑いアジアでも需要が期待できます。お湯を必要としないため、アウトドアなど用途が広がる可能性もあります。
原材料費や人件費が上昇する中、価格を下げるだけの競争には限界があります。しかし、既存商品に新しい技術や使い方を加えれば、成熟市場にも商機を生み出せます。
1958年、安藤百福氏がインスタントラーメンを生み出してから68年。日清食品が変えたのは商品ではなく、「カップ麺にはお湯が必要」という前提でした。
長く愛されてきた商品だからこそ、変えるべきものは商品ではなく、その常識なのかもしれません。冷たいカップヌードルの熱い人気は、日本企業が世界で成長するためのヒントを示しているのであります。