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益田 和久

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第188回 デジタルハラスメント

2024/10/10

管理職や職場リーダー向けの研修に登壇しますと、そのときにテーマに限らず、必ず話題に上がるのが「パワハラ」。
部下に対してちょっとだけ厳しい口調で注意や指導をすると、それがパワハラと捉えられてしまうのではないかと、戦々恐々している方が想定以上に多いなぁと感じます。
そしてそのパワハラ対策に神経を使うがあまり”沈黙は金なり”の原則に従って、注意や指導をしない、もしくは”ゆるい”トーンで注意をすることを選択してしまい、社内のガバナンスが緩んでいるという状況を引き起こしているという職場も散見されます。
社内通報制度も確立してきますし、就活生向けのSNSでも書き込まれたりしますから、企業も神経質になっています。
若手社員の離職・休職も増加傾向にあることを鑑みたとき、何らかの対策はしないといけないのかもしれません。

パワハラ対策研修も依頼をいただくことがありますが、内容的に参加者の方が初めて聞くようなことはないと思います。
ですから講義ポイントは、ハラスメントは当事者同士の問題でもあるので、相互の人間関係(信頼関係)の構築や職場の心理的安全性の確保ということに重きを置くようにしています。
ただ、長らくパワハラ研修をやっていて感じることは、パワハラに対して神経を使っている方は、それほど心配する必要もないかなと。
というのもパワハラをする人のほとんどが、無自覚パワハラが多いからです。
パワハラ研修を開催しても、一番来てもらいたい人が来ていなかったり、一番わかってもらいたい人に講義内容が響いていないことが多々あります(苦笑)
粘り強くやっていくしかないんでしょうね。

そんな状況の中、最近の管理職や職場リーダー向け研修で、違うハラスメントの話を聞くことが出てきました。
テクノロジーハラスメント、いわゆる「テクハラ」。
ITリテラシーやデジタル機器操作が苦手な人に対して行われるいじめや嫌がらせのことです。
背景には企業や団体のDX化推進があります。
具体的には、ITリテラシーやデジタル機器操作が苦手な人に対して
・「こんなこともできないのか」「もういい、私がやります」といった言葉で責めたり、相手を突き放すようなことを言う
・わからないことを聞いたときに冷たい対応をする「この前教えましたよね?」「自分で調べてください」
・事前の説明やサポート(マニュアル)もないまま、仕事を渡される
といったことです。
このハラスメントを受けている側が、管理職や職場リーダー側なのです。
いわゆる「逆テクハラ」とでもいうのでしょうか。
かなりのストレスを感じている方がいるようです。
研修ではその当事者から相談されたりします。

テクハラ発生の原因はいろいろありますが、一番はデジタル世代とアナログ世代の間における、ITリテラシーの差だと思います。
アナログ世代といわれる方々が全員そうだというわけではありませんが、苦手な方が一定数いることは確かです。
育ってきた環境が違うので仕方がないとは思いますし、スキルの高い側がそこを知ってか知らずか、心ない対応をするのはいかがなものかと思いますが、いろいろと話を聞いていくと違う理由が見えてきます。
若手社員に何故テクハラが発生するのかを聞いたところ、以下のような話をしてくれました。
・苦手と言って新しい技術や知識を学ぼうとしないから
・知らないくせにメモをとらない、メモをとっても見返さない
・結局、自分でやろうとせずにこちらにふってくる

ぐうの音も出ないですね(苦笑)
そしてこれは、管理職や職場リーダーが、新入社員・若手社員に抱く不満と似ていて皮肉な感じもします。
企業や団体も研修やサポート体制を整えてはいますが、運用という点ではまだまだ課題感があると思います。
結局は「やる気・向き合う姿勢」がポイントになると思いますが、このあたりを少し深掘りしていく必要があると感じた今日この頃です。