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益田 和久

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第173回 本屋のない人生なんて 

2024/06/27

高校の同級生で文筆家の三宅玲子さんが新書を出版しました。
タイトルは「本屋のない人生なんて」。
スマホが全国民の標準的な持ち物になってから、本を読む人は今まで以上に少なくなったような気がします。
電車に乗っていても、スマホを見ている人と本を読んでいる人の数を比べると一目瞭然。
勿論そのスマホを見ている人の中には、書籍や雑誌を電子版で読んでいる人もいると思います。
いわゆる紙の本、紙の雑誌、紙の新聞を読んでいるはすっかり少なくなったような気がします。
このコラムでも何度か、電子書籍のことについては書きました。
タブレット1つで何千冊の本を持ち歩けますし、雑誌はサブスクでほとんどのものを読むことができます。
Amazonのunlimitedは月々980円で(Kindleが指定する)何万冊もの本が読み放題です。
スマホやタブレットに移行する人が増えるのは必然だと思います。

そうなってくると、本屋さんに行く人が減っても不思議ではないです。
つまり本屋さんは要らなくなるわけで、いわゆる「街の本屋さん」はホントに少なくなりました。
感覚的にもそうですし、実際にデータ上でもそのようです。
生き残れるのは大手書店ばかり。
その大手書店でも経営は決して楽ではないし、将来予測も安泰ではない。
このままいくとリアルな本屋さんは、もっと少なくなってしまうのではないかという声はあります。
そんな状況下にありながら、全国には本好きの人を魅了し、地域の人から愛されている個人経営の本屋さんが存在します。
11人の店主の本に対する想いや、書店経営における信念や矜持を描いたのが、先述した三宅玲子さんの「本屋のない人生なんて」です。

スマホ一つあれば、世界中のいろんな情報を知ることができるし、また自分の考えを発信することもできます。
本は知識や情報を習得するというものもありますが違う側面も持っています。
辛いときや迷ったときの自分の支えや人生の指針になったりもします。
それはスマホでもできないことはないのかもしれないけど、本屋さんで出会い、何度か読み返す1冊というのは、違う感覚のような気がします。
スマホの情報に誘導されたわけでもなく、本屋というある意味スローな空間の中で、いろんな本を手にとって流し読みをして、自分の直感で買った一冊は違った価値があるように思います。

私は親の影響もあって、小さい頃から本屋に行くのはとても好きで、今でも週1回は行くようにしています。(それでも以前に比べたら行く回数は減っています)
いろんな本を手に取って流し読みをしていくだけでも、多くの教養に触れることができます。
これは電子書籍サイトではなかなかできない。
同じ1時間でも得られるものは全然違うような気がするのです。
ただここ数年は本屋さんに行ってあれこれ立ち読みをして、最後は家に帰ってからKindle版を購入する流れになっています。
これはホントに申し訳ないことです。

最近、仕事仲間と話をすることがあり、電子書籍の話になりました。
そこで「良い本、ずっと読み続けられる(読み返せる)本は紙がいいかもね」という結論に辿り着きました。
そこに特別な意味があるわけでもないのですが、今のネット時代に忘れがちな「手間暇をかける」「有形(紙)にこだわる」「劣化を楽しむ」ことで、違う世界が見えてくるような気がした今日この頃です。