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深山 敏郎

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第154回 困ったときの老荘だのみ エピソード54

2024/05/28

毎回老子の言葉をひとつずつご紹介しています。
コラムの153回目では、「小知を捨てよ」について検討してきました。感性でとらえられない存在を認識することが「明知」であり、「明知」によって私たち人間は無限に自由になるとのことです。

今回は「盗賊の驕り(おごり)」です。

「盗賊の驕り」とは何か

今回は老子の言葉「盗賊の驕り」の意味をご一緒に考えましょう。
老子は言います。
「明知」を得て大いなる「道」の精神に沿った政治を行うとすれば、その際に重視するのは邪道に陥らないことである、と。

大道は平らかであるにもかかわらず、私たちは小知に頼って知らぬ間に小径をあぶなっかしく歩きたがるものです。

老子は立派な建物の役所を立てるのは、立派な政治が行われている時ではなく、正反対の状況だというのです。
田畑は荒れ放題、民衆は疲弊し、貧困に苦しんでいる時なのです。
そうした政治をするのは盗賊であり、その行為は驕りに満ちたものです。
奇麗な服をまとい、山海の珍味を堪能しようとする、それこそが盗賊の驕りなのです。

それゆえ老子は自らを戒め、そうした盗賊の驕りという邪道に陥らないように注意するというのです。

私たちの仕事における「盗賊の驕り」

経営者は、従業員のおかげでお客様へ商品・サービスを提供できます。
一人ひとりの血のにじむような努力のおかげです。
管理者も同様です。
それを誤解して、従業員を「使ってやっている」、「仕事を与えている」と錯覚し、まるで代替可能な部品のように扱うとどうでしょうか。

それこそが、盗賊の驕りということになりませんでしょうか。
管理者についても同じです。
「自分が部下を指導して仕事をできるようにしている」という考えのもとに、ハラスメントまがいの態度を取るなどはまさに、盗賊の驕りとはいえないでしょうか。

仕事はお客様が私たちに与えてくださり、また教えてくださるのです。
マーケティング・リサーチに始まり、商品・サービスの開発、創出・製造の仕方、提供やアフターサービスの仕方まで、本当に教えてくださるのはお客様なのです。

職場における上司・部下の関係は、その時々の役割分担にすぎません。
それを忘れて経営者のみが多額の報酬や特権を得て有頂天になっているとすれば、それこそが盗賊の驕りということです。
こうした邪道に陥らないよう、自省しようではありませんか。

本コラムが私たちの日々の悩みを和らげ、深く自省するきっかけになれば幸いです。

「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。

レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。

(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
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