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星 寿美

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第71回 共感は暴力になりうる

2022/08/29

前回の記事で・・・
人の話を聞くときには「心に寄り添いましょう」「共感しましょう」などと良く言われますが・・・

実は、
『共感は暴力になりうる』のです。

と書きました。それについて、今回の記事で解説したいと思います。

「共感が暴力になる?」

少し驚いた方も、同感だという方もいらっしゃるでしょう。
これは、一体どういうことなのか?

例えば、辛い体験談を話した時に、同じ体験したこともない人から

「わかるわかる」

なんて言われたら、

「わかるわけないでしょ」「あなたに何がわかるのよ〜」などと感じる場合もあります。
この時、安易に共感されたことで、知らずに相手を傷つけてしまうこともあるんです。

もっというと、
たとえ、同じ体験をしていたとしても、その人の感じ方は誰にもわからないのです。性格も背景も違うのですから。

だから『心に寄り添う』『共感する』ということが、暴力になる場合もある、ということ。それを心に留めていただきたいなぁと思います。

ちょっと、話はずれますが、最近よく言われる『傾聴』について。もちろん、傾聴はとても大事なことですし、もっと「話を聴ける人」を増やしていきたい!とも感じています。

でも、この傾聴。

「うなずきながら聞く」「聞いてますよという態度で聞く」などのスキルでやっている人も多く見ます。

逆に、傾聴なんて言葉すら知らない人が、自然に傾聴が上手な方もいれば、傾聴しているという意識で、スキル丸出しの人もいます。
スキルでやられてしまうと、非常に話しづらいのですが、スキルを駆使している人は気づいていないことが多いので、注意が必要です。

もちろん、場数や慣れもあるのかもしれません。でもそれ以上に「在り方」とか「センス」などが大きく影響しているように私は感じています。

さて、共感は暴力になりうるし、傾聴もスキルでやっちゃうと逆効果になりうるんだったら、どうしたらいいのでしょうか?

共感よりも大切なこと

実は、共感よりも、ず〜っと大切なことがあります。

それが、相手の話をただ『ありのまま受容する』ということです。

ここで言う『ありのまま』は、本当にありのままという意味です。
相手の言葉を理解できていなくても、共感できなくても、なんら問題はないんです。

全く相容れない意見を言われたとしても、

「そうなんですね」「あなたはそう考えているんですね」と、ありのまま受容します。

相手の意見が受け入れられなくても「あなたはそう思うのね(私は違うけど)」と、自分の心に嘘をつかずに、気持ちよく受容できますよね。

実は、
共感がゼロであっても「そうなんですね」と受容してくれると、話し手はそれだけで安心します。まず、受け取って貰えたことで、心が安心して、相手の話を聞く余裕が心に生まれます。

でも、
全く相容れない意見だから、と言って「いや、それは違うだろう!」とか「私はこう思うよ」と自分の話を始めてしまうと・・・

自分が話したことを受け取ってもらえていない状況なので、心が不安定で、話をきくゆとりが作れないまま会話を続けなくてはいけなくなります。

会話の基本を意識しよう!

会話はキャッチボールが基本だと、誰もが知っているのに・・・

実際は、相手の投げたボールを受け取ることなく(否定したり、無視したりして)自分のボールを投げ返す。

このような会話が日常に溢れています。

それは、コニュニケーションの基本、その習慣がないから。
私たちは親や学校や社会で、このような基本的なコミュニケーションを受けずに育ってきています。

もちろん、できているご家庭や学校もあるでしょう。

でもそれは一部の人たちで大部分が、ありのままを受容しあう会話ができていない社会です。

だから、全くの無意識です。できていない、と言うことが当たり前すぎて、わからないかもしれません。
逆に、当たり前にできている人たちもいますが、それも当たり前すぎて、意識していないかもしれません。

でも、共感することより、何より大事なのが、まず、この「ありのままを受容する」と言う部分。相手の意見が自分とは全く違うとしても、まずは一度受け止める。

「そうなんだね」
「そうだったんだね」
「あなたはそう感じたんだね」

これらの言葉は、自分の心に全く嘘をつかずに気持ちよく言える言葉です。
そうして、相手の投げたボールを受け取ってから「私は、こう考えているよ。」と自分のボールを投げてみてください。

今回の記事は、
当たり前にできている人には必要のない記事でした。

でも、多くの人が無意識で・・・
相手と違う意見を言われた時に・・・

特に部下や後輩や子どもなどが『理解不能な』または『甘い』などと感じる意見を言ってきた時に。

「そんな考えじゃダメだ!」「いいか、こう考えるだんだ」「いや、それはこうじゃないか?」など、受け取るどころか否定から会話を始めていないでしょうか?

そういう時こそ、

「そうなんだね。」「そう考えているんだね」とありのままを受容して会話をしてみてください。

結果が今までとは大きく違うはず。
ぜひ試して欲しいと思います!

そもそも『本当には理解し合えない』のが私たちです。
だからこそ、分かり合えたと感じたり、響きあえた時に「嬉しい!」って感じるのだと思うのです。

心から共感したら、そのまま「共感します」と伝えればいいし、響き合える時は感じるものがありますよね。

だから『あえて共感しよう』『あえて心に寄り添おう』としなくても『ただ、ありのままを受容する』方がずっと大切なことなのです。