先日、日本経済新聞に「中高生らの『心の不調』防げ アプリなど活用、早期把握・治療に期待」という記事が掲載されました。
記事によると、不登校者数や中高生の自殺者数は過去最多を更新し続けており、若年層が抱える心の問題は非常に深刻化しています。
生活環境が変わる年度初めは特に注意が必要であり、オンラインやデジタル機器を症状の早期把握や相談、治療に生かす新しい試みに期待が集まっているという内容です。
具体例として、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)などが開発した「KOKOROBO」というオンラインシステムが紹介されています。
これは、スマートフォンやタブレット端末の画面の指示に従い、直近2週間の不安感や睡眠の具合などを回答していくことで、心の健康状態が可視化されるというものです。
評価結果は「問題なし」「軽症」「中等度以上」に分類されます。
軽症の場合はAIを使ったチャットボットがストレス対処を行い、中等度以上の場合は専門の相談員によるオンライン相談や医療機関への紹介へと繋がる仕組みになっています。
このニュースは、日々人材育成に携わる弊社(私)にとっても、決して見過ごすことのできない非常に重要なテーマだと感じました。
現在、多くの企業では新入社員研修が行われています。
新しい環境に身を置くこの時期、新入社員たちには目に見えない大きなストレスがかかっていることは間違いありません。
私たち人材育成の担当者や現場のマネージャーは、彼らの日報や日誌を確認し、研修中のちょっとした言動や表情の変化を注意深く観察しています。
そして、少しでも異変を感じ取れば、短時間でも面談を設定し、ケアに努めています。
しかし、こうした取り組みは属人的なマンパワーに頼る部分が大きく、どうしても気づきが遅れたり、予兆を見落としてしまったりする限界があります。
中高生の場合も同様でしょう。
学校の先生や親御さんも気にかけているはずですが、思春期という年代の特性上、本音や悩みの真相を掴むのは非常に困難です。
周囲の大人から見れば、ある日突然不登校になったり、最悪の事態を引き起こしてしまったりするように見えるケースも少なくないはずです。
だからこそ、スマートフォンに毎日向き合うことが日常であり、デジタルへの抵抗がない若い世代にとって、アプリを通じた「心の不調の早期把握」というアプローチは、非常に理にかなっており、大きな効果が期待できます。
私が特に素晴らしいと感じたのは、日々の入力データをもとに状態を判定し、軽度なうちから次のアクションが明確に「仕組み化」されている点です。
一般的な対話型AIとは異なり、最終的には人と人との関わり(医療者や相談員)へと確実に繋がる動線が設計されていることも安心感を生みます。
メンタルヘルスの領域においては、定点観測と1ヵ月後の再チェックを促すような継続的なフォローアップが何よりも重要であり、膨大なデータを客観的に処理し続けるAIやデジタルの力は、ここでも大いに発揮されるでしょう。
この記事で紹介されていたシステムは主に中高生以上の学生が対象でしたが、この仕組みは社会人、特に若手社員のメンタルケアや離職・休職防止の取り組みにもそのまま応用できるはずです。
企業の人事部門にとっても、こうしたデジタルの力を借りて社員の心の健康状態を定期的にモニタリングし、客観的なアラートを仕組みとして整えていくことは、今後の組織運営において不可欠になっていくでしょう。
しかし、忘れてはならないことがあります。
デジタルやアプリは、あくまで不調を「可視化」し、初期段階でのサポートを提供する「仕組み」に過ぎません。
そのアラートを受け取った後、当事者にどう寄り添い、どう解決策を見出していくかは、結局のところ私たち人間の役割です。
この便利な仕組みを最大限に活用しながらも、同時に、それを運用する私たち大人の「人としての関わり方」というアナログな部分こそ、現状に合わせてアップデートしていく必要がある。
そのように強く感じる今日この頃です。