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岩田 徹

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第167回 銀メダルの裏に

2024/09/20

多くの感動と多くのメダル獲得という歓喜をもたらしたパリ五輪日本代表選手たち。
選手の多くはすでに次の戦いに挑み、国際大会でも活躍されています。
4年に1度という大舞台で燃え尽きることなく、
次なる目標を再設定し、新たなモチベーションで次に向かうアスリートの皆様には、
尊敬の念しか抱きません。
今回、このコラムで取り上げるのは、近代5種の佐藤大宗選手。
近代5種という競技は、馬術、フェンシング、競泳、そして、射撃とランニングを
組み合わせたレーザーランの総合得点を争う競技です。

日本人選手として初めてのメダルとなる銀メダルを獲得した佐藤選手は現在30歳。
中高で水泳に打ち込み、近代5種を始めたのは19歳。
5種類の競技を高いレベルで揃えないと戦えないこの競技において、
19歳からのスタートというのは決して早くないスタートだと思います。
実は佐藤選手は東京五輪では代表に落選。
パリ五輪への思いは強いものがあったと思います。
この近代5種、フェンシングのみ初日の得点が決勝に加算される仕組みになっていて、
佐藤選手にとっては苦手種目だったそうです。
ですが、五輪でメダルを獲得するには苦手の克服が必須です。
そこで2年前から佐藤選手が指導を仰いだのが、フェンシング日本代表チームでした。
フェンシング日本代表チームは東京五輪でも金メダルを獲得し、
パリ五輪でも金メダルを獲得した、世界有数の強豪チームです。
そのチームに武者修行に行ったのが佐藤選手でした。
海外の大柄な選手たちに圧倒されることが多かったとのことですが、
そんな相手にも負けない技術を身につけようと必死の努力を続けたそうです。
パリの現地に入ってからも、フェンシング日本代表選手たちが金メダルを獲得した
2日後にも、佐藤選手の練習に付き合ってくれたそうで、
競技を超えた日本選手団としての一体感、団結力を感じずにはいられませんでした。
迎えた本番で佐藤選手はフェンシングで6位につける好スタートを切り、
勢いをつけて他の種目も高い成績を残し、銀メダルを獲得しました。

一つだけ突出した強さがあるだけでは勝てない近代5種。
逆に一つの弱みがあると挽回できない競技でもあると思います。
自身の得手不得手を冷静に分析し、弱みを消し、強みに持っていく。
日本人選手初の銀メダル獲得の裏に隠された
フェンシング日本代表チームとのエピソード。
こうしたことも五輪観戦の一つの醍醐味だと感じました。