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深山 敏郎

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第170回 困ったときの老荘だのみ エピソード70

2024/09/17

毎回老子の言葉をひとつずつご紹介しています。
コラムの169回目では、「不争の徳」を検討してきました。
老子は言います。
「立派な武士は、強がらず、戦上手は、誘いに乗らない」と。

今回は「兵法の極意」です。
老子は言います「戦争ごとは、自ら仕掛けてはいけない。相手が仕掛けてくるまで待て。自らが仕掛けるより、退いて守るべき」と。

「兵法の極意」とは何か

今回は老子の言葉「兵法の極意」の意味をご一緒に考えていきましょう。
「敵をあなどることほど大きな誤りはない」と老子はいいます。
もし必要があって敵を襲っても、襲ったようには見えず、武器をとってもとったように見えないことが極意であるというのが老子の考え方です。

戦を進んで仕掛ける者は既に「道」に逸脱しているのです。
双方の力が伯仲しているときは、相手から攻撃されたためやむを得ず応戦する側が、いつも勝つのです。

ビジネスは「戦(いくさ)」であるか

ビジネスは戦いに例えられることが多々あります。
さて、仕事は「戦」でしょうか。
他社を競合他社と呼び、顧客に取り入ろうとあれやこれや策をめぐらす、それを戦略と呼び、企業活動に必須のことであるといいます。
これは本当でしょうか。

筆者はかつて、中小企業診断士の資格を取得する過程で、企業の戦略や、その構築の方法論を書籍や事例で学び、その後、それを教える立場をとってきました。
企業活動において戦略というものは常に是認され、より新しい戦略を構築するという繰り返しでした。
シェアを拡大することが利益率向上にもつながるというハーバード大学のPIMS研究に基づく市場シェア拡大戦略、市場ポジションをマーケット・リーダー、マーケット・チャレンジャー、マーケット・ニッチャー、マーケット・フォロワーに4分割し、そのポジションに合致した戦略定石があること、その後、市場成長が止まると組織をスリム化することを目的としたリストラクチャリング、そしてビジネスのプロセスを抜本的に再構築してお客様の価値を高めようというリエンジニアリングといった手法、などなどです。

ところが市場環境は激変していて従前の戦略には限界が見えてきました。
そうしたことよりも、地球環境や人権を重視した企業姿勢こそが企業価値を高めることにつながることがようやく分かってきました。

そうした時代に「戦」というものが企業活動には必要なのでしょうか。
老子がもし現代にいきていたら、どう世の中を分析し、方向性を示すのでしょうか。
筆者はそんな疑問を持ちながら企業活動をご支援し続けています。

本コラムが私たちの日々の悩みを和らげ、深く自省するきっかけになれば幸いです。

「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。

レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。

(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
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toshiro@miyamacg.com