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益田 和久

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第183回 バーチャルオフィス

2024/09/05

「バーチャルオフィス」という言葉を一度は目にしたことがあるかと思います。
”法人登記用の住所と貸し”をする拠点(事務所)のことです。
このバーチャルオフィスの数が増加しているようで、東京23区内だけでも約300カ所あるそうです。
特に銀座は「本店所在地」とする企業の2割超の入居先です。
「銀座」はやはりブランドですからね。
他にも新宿、青山、日本橋といわゆる「一等地」に集中していますね。
利用する側としては、見た目上の価値というか企業のブランディングとしてはもってこいのシステムです。

銀座にある築40年の有名なオフィスビル。
広さは64平方メートル。
フロアには予約制の会議室が一つあるのみ。
常駐スタッフも一人。
そこになんと2500社超の「本店」が存在しています。
一見「なんじゃそれ」と誰しもが思うはずです。
会社によっては同業者や取引先と「本社」が同じケースもあってもおかしくないはず。
「営業実態がないのにおかしいじゃないか」という声も聞こえてきそうですが、商業登記法は本店所在地の決め方に特段のルールを設けていないので違法ではありません。
住所が現実に存在しない場合や、同じ住所に同じ商号の法人がある場合を除き、原則どこでも登記できるようなのです。
ただ違法ではないからいいというわけではなく、法務省の見解では「現行法は事務所不要の働き方を想定していない」とのこと。
テレワークや副業の広がり等の蛇甲斐情勢変化に法律が追いついていない感があります。

今回この話題を取り上げたのは、弊社もこの「バーチャルオフィス」を活用しているからです。
ただ弊社の場合は「本店所在地」ではなく「支店・出張所」です。
お客さまにもそのようにお伝えしています。
利用することになったのは、個人事業主から法人にしたとき。
職種柄日中は電話に出られないことも多いのでその対応と、都心の便利なところに拠点が欲しかったからです。
元々はビジネスパートナーの方のところを間借りしていたのですが、そこが諸事情で立ち退きになったこともあり、考えるきっかけになりました。

最初に書いた通り、都内だけでも300箇所近くのバーチャルオフィスがありますが、その利用条件(料金)はまさに”ピンキリ”。
条件によっては月数百円からもあるようで、スタートアップ企業も利用しやすいですよね。
業種によっては”本店所在地の地名”が信用に影響することもあるようです。
本店がどこにあるかでお客さんの反応がまるで違うと。
また私の周囲の自営業の方でもいらっしゃいますが、女性の場合は取引先に自宅を明かしたくないということで利用されている場合もあります。

実態はどうなのか。
都内300箇所のうち、いわゆる「住所貸し専門」が100箇所。
そこに約28000社の登記があるようです。
残り200箇所は部屋や机のレンタルもできます(弊社の場合これ)。
ただこの200箇所の中にも住所だけ借りている法人もあります。
また最近では、地方の会社が東京に拠点をおく場合で使っているケースも増えてきているようです。
海外と取引をする場合、「東京」というのは抜群の知名度があるので、商売的にもやりやすいようですね。
そういった背景もあり、インターネット上では地方企業をターゲットにしたバーチャルオフィスの広告が目立ってきました。

一方、バーチャルオフィスの利用者、また拠点自体が増えてくると、いろいろなトラブルも増えてきます。
バーチャルオフィス自体が急に閉鎖をしたり、契約通りのサービス(電話応対、郵便物転送)が提供できないということも起きているようです。
特に前者は突然「本店」がなくなるわけですから、商売的にもダメージがあるはずです。

オンラインを基軸においた働き方が増えてくると社会情勢も変わりますし、ものの見方や考え方も変わってくると思います。
私たちのような個人事業主や少人数の企業の働き方も、その変化に随時対応していく必要があります。
リアルであろうがバーチャルであろうが、お客さまに弊社の「本質」を理解していただけるような不断の努力が必要だと感じた今日この頃です。