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深山 敏郎

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第58回 経営者のレジリエンス(8)経営者の思考法②「適切な判断をする」

2022/07/26

前回は、経営者のレジリエンス(7)経営者の思考法①「客観思考」でした。

今回は、「経営者の思考法②適切な判断をする」というテーマです。経営者とはここでは起業家、事業承継者、雇われて経営を任されている人のすべてを含みます。

経営者がどのような視点でものごとを観て、判断し、問題を解決に導くのかということは、経営者のレジリエンスそのものと言ってよいでしょう。

このコラムでは経営者の思考法を、便宜的に以下の3種類に分けて考えています。

1.客観的に把握する「客観思考」
2.適切な判断をする
3.問題解決をする 

前回はこの3種類の内、1.客観的に把握する「客観思考」をとり上げました。
今回は2.適切な判断をするということについて展開していきます。

経営者の皆様にとって、今回のテーマである「適切な判断をする」ことほど難しいことはないのではないでしょうか。

VUCAの時代に、難しいけれど適切な判断を求めてゆく

「客観思考」がある程度できたとして、それでビジネスが成功するでしょうか。多くの場合、そうそううまく物事は運びません。そのため、「適切な判断」が必要です。

現代はVUCA(ブーカ)の時代といわれています。
VUCAとは、簡単にいえば「先行き不透明で、将来予測が困難」という意味です。


V(Volatility:変動性)
U(Uncertainty:不確実性)
C(Complexity:複雑性)
A(Ambiguity:曖昧性)

VUCAは、こちらの4つの単語の頭文字をとった造語です。

レジリエンスの高い経営者は、こうした時代にもかかわらす、「適切な判断をしよう」という努力を怠りません。

難しいからこそ、一流の経営者は「適切な判断」を求め続ける

絶えず「適切な判断」をしていこうという姿勢を持ち続けることこそが、経営者のレジリエンスを高め、そして判断力を向上するのではないでしょうか。
VUCAの時代だから予測が困難なので、この程度で良いと考える経営者と、限られた時間や情報であっても、そこから自社や顧客、社会のために最適な判断をしようと務める経営者では、年数を重ねるごとにその差が明確になっていきます。

どういう状況の中で、どのような判断をしたのか、その根拠となったのは何か、そうしたことを、皆さんは書き留めていらっしゃるでしょうか。
判断したら、それで終わり、結果はどうなるかわからない、厳しい言い方をすれば、それでは経営は出来ないのではないでしょうか。
筆者もそういうことをなるべく明確にして、次の判断に活かすようにしています。

経営者として適切な判断をするための5つの姿勢

経営者として適切な判断をするためには、どのような姿勢が必要なのでしょうか。
ここでは大きく5分類してみます。

1.日ごろから客観的な情報を収集し、分析をしておく
客観的な情報とは、前回ご案内した空間・時間・心理的な視野を幅広く観て、それを分析しておくということです。
数値などのデータだけを収集しても、整理・区分して分析しておかなければいざという時に役に立ちません。
主要な項目については、漏れがないか、また、ダブっていないか、というMECE(ミーシー:漏れなくダブりなく)する整理・区分を心掛けます。
出来る範囲で結構です。

2.会社の使命や価値観と自らの意思決定を照らし合わせる
いくらビジネスチャンスがあるからといっても、会社の使命(ミッションとも言います)と合致しないことは現場で長続きしません。
日ごろから経営者として部下に伝えている使命との結びつきを明確にします。
そして自社らしさ、つまり自社の価値観と合致したやり方で実施することを前提とします。

但し、VUCAの時代には昨日までの正しい判断が、今日、通用するとは限りません。
自社の使命を再定義する必要があれば躊躇なく行います。

3.判断したことは、根拠と共に社内外に伝える
ステークホルダーの内、部下、顧客、取引先などに判断内容と根拠を丁寧に伝えることが判断内容を理解してもらい、協力をしてもらうために必須です。

4.判断のサイクルを短くする
長期計画は長期スパンで検討しますが、毎年見直すことをしていらっしゃることでしょう。
それと同じように、内外の環境変化に応じて、より短サイクルで判断をします。
例えば、必要に応じて行動計画などを1ヵ月、1週間という単位で再検討して修正します。

5.考え、考え、考えて大胆に実行する
思考の奥深さは判断に影響を与えます。
表面的で対症療法的な判断は、本質的な問題解決につながりません。
深く考える、幅広く考える、別の立場で考えるなどを経営者だけでなく組織的な思考として定着させましょう。


次回のテーマである「経営者の思考法③問題解決」では、経営に必要な「問題解決的な思考」について考えてみます。
レジリエンスの高い経営者とそうでない経営者の差は、こうした問題解決の思考方法にも表れます。

レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。

toshiro@miyamacg.com (筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
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