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深山 敏郎

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第18回 シェイクスピアの登場人物のレジリエンス(6)空騒ぎ

2021/10/19

前回はシェイクスピア作品「真夏の夜の夢」の大公シーシアスについて、私なりに分析してきました。

今回はレジリエンス応用編の第六弾として、シェイクスピアの戯曲「空騒ぎ」の主要登場人物の一人、「ベネディック」のレジリエンスについて検討してみます。

「空騒ぎ」は、誤解から始まり、真実で終わる言葉の喜劇

「空騒ぎ」は、シェイクスピア喜劇の中でも言葉遊びが多く、私たち日本人には原語で話されているジョークの真意を理解するのに四苦八苦することが常です。
私はたまたま、学生時代に聞いたジョン・ギールグッド(以下、ギールグッド)とペギー・アシュクロフトという当時のスター俳優たちが演じたレコードに感動したものの、そのジョークは半分も理解できたかどうかというところでした。
しかしそのテンポの良さに感嘆したものでした。
そのギールグッドは前回も触れた英国王立シェイクスピア劇団(RSC: Royal Shakespeare Company)の看板俳優の一人で、Sirの称号を冠されたことでも良く知られています。
また、ロンドンには彼の名前を冠された劇場があります。

彼の弟子に、ローレンス・オリヴィエなどがいます。
また、マーロン・ブランドも一時期彼に師事していました。
個人的な話で恐縮ですが、ギールグッドは私が最も尊敬する俳優です。
こぼれ話をもう一つ許していただけるのであれば、弊社のWebに推薦文を書いてくれている超ベテランの俳優で、家族ぐるみの親友であるギャリー・レイモンドのRSCデビュー作はこのギールグッドの演じた「リア王」(1955年)であったとのことです。
その時のことも、いろいろと聞いていますがここでは省略します。

ギールグッドは「空騒ぎ」の中で、若くて毒舌の貴族ベネディックを演じています。
ペギー・アシュクロフトは恋の相手役のベアトリスを演じています。

舞台関係者によるとギールグッドはとてもシャイでナイーブな方で、舞台の直前はずっと自分の楽屋にこもって静かに精神統一をしていたとのことでした。
舞台で見せる演技は多くのファンを魅了しました。
また、彼の出演した映画で私のお気に入りは、「オリエント急行殺人事件」や「ジュリアス・シーザー」です。

「空騒ぎ」のストーリー

この作品の舞台は、イタリアのメッシーナ。
そこの知事レオナートの館に凱旋してきたアラゴン領主ドン・ペドロ一行が立ち寄ります。
そこで同じく凱旋してきた若い貴族クローディオが知事の娘ヒアローに一目ぼれをします。
周囲が画策して二人を結びつけるのですが、そこに現れるのはドン・ペドロの腹違いの弟でクローディオに嫉妬しているドン・ジョンです。
ドン・ジョンはクローディオとヒアローの恋をぶち壊しにします。

その結果、結婚相手であるクローディオから誤解とはいえ侮辱され深く沈みこんだヒアローは、死んだことにして誤解が解けるのを待ちます。

一方では、ベネディックと、彼の毒舌に負けないほどの毒舌で返すベアトリスは実は互いに憎からず思っていて、結果として結ばれます。
そのベネディックは、恋人となったベアトリスの親友ヒアローへのクローディオの仕打ちに激怒して決闘を申し込むまでになります。

しかし、シェイクスピア喜劇の常として誰も殺されずめでたしめでたちとなります。
非常に大雑把なご説明ですが、ネタバレをしない程度に書いてみました。

ベネディックのレジリエンス

今回も以下の代表的なレジリエンス要素を用いて分析をします。
1.自己効力感
2.感情のコントロール
3.思い込みへの気づき
4.楽観
5.新しいことへのチャレンジ

自己効力感はある程度高いと考えられます。
それと同時にプライドが高く毒舌を繰り返します。
しかし、異性や結婚に関してはとても臆病であり、それと裏腹に強がりを言い続けます。
真の意味での自己効力感を備えているというよりは、自分の戦で発揮する能力や雄弁さへの自信が強いということであろうと思われます。

感情のコントロールは、それほど得意ではなく恋人のためということもあったものの、感情が激して親友に決闘を挑むまでになります。

思い込みへの気づきという面では、あまり得意分野とは言い切れません。
親友への決闘の申し込みや友人たちが画策した恋愛へ誘導される事実など、思い込みが強いという印象です。

楽観という視点からは、この劇の中ではあまり証拠がありません。
自分を強く信ずるというよりは、この芝居の中では周囲に振り回されて楽観には至っていません。

新しいことへのチャレンジという視点では、この芝居の中ではよく分かりません。

次回はシェイクスピア喜劇として有名な「十二夜」の登場人物について分析してみましょう。

レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。

また、シェイクスピアに関するビジネス活用のご参考として、拙著:「できるリーダーはなぜ「リア王」にハマるのか」(青春出版)があります。
この書籍はシェイクスピア作品を通してビジネスの現場にどう活かしていくかを検討するために書かれました。

toshiro@miyamacg.com (筆者:深山 敏郎)
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