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第284回 建設現場に広がるDXに思う、「3K」の現場こそデジタルの出番と、投資と意識という二つの壁

2026/08/13

先日、日本経済新聞に「北海道の建設現場で進むDX 四足歩行ロボットが測量、AIが合図認識」という記事が掲載されました。道内ゼネコン大手の岩田地崎建設が、岩見沢市周辺の工事現場で重機の遠隔操縦とロボットによる自動測量の実証実験を1ヵ月にわたり実施したという内容です。油圧ショベルなど4台を現場内の操縦室から遠隔操作し、土砂を敷きならし固めた後の測量は、3Dレーザースキャナーを背負った四足歩行ロボットが自動で担ったといいます。また、こぶし建設は重機の後部カメラで死角にいる従業員の合図をAIが認識し、運転席のモニターに表示する安全確認システムを導入。緊急停車を告げる「両手」が上がれば画面が赤く光り、音でも知らせるそうです。

お客様に建設業の会社が多いこともあり、この記事はどうしても目に留まりました。まず驚かされたのは数字です。道内の工事額は2010年度の約2兆円から25年度には約4.1兆円まで増えている一方で、建設業の就業者数は1995年ごろの35万人から2025年には23万人まで減っている。人手不足が深刻だという話は日常的に耳にしていますが、この落差を突きつけられると、あらためて言葉を失います。仕事は倍に増え、担い手は3分の2になったのです。

そして考え込んでしまったのは、これが北海道の話だということです。道内に大手ゼネコンを抱え、インフラ整備の需要も大きい地域でこの状況なのですから、他の地方都市はもっと厳しい局面にあるのではないでしょうか。加えて、建設現場に外国人労働者が非常に多いことは誰の目にも明らかです。解体業などはほとんどが外国人だという話も、外国人の方が自ら会社を立ち上げて建設業を営む事例が増えているという話も耳にします(いずれもあくまで私が聞いた話です)。

建設業が直面している課題は、単なる人口減少だけではありません。以前から「3K職種」と呼ばれてきたように不人気な業種と見なされがちで、近年その傾向はいっそう顕著になっている気がします。昨今の猛暑も、屋外作業が敬遠される一因になっている可能性は十分にあるでしょう。

ただ、そうした状況のなかでも建設業の技術は着実に進んでいます。今回のロボットや遠隔操縦はもちろん、ドローンによる測量や点検、BIMのようなデジタル設計技術も広がってきました。記事にもあったように、建設DXが進めば、人材が足りない地方の工事を他の地域の事業者が受注できたり、工期短縮でコストを削減できたりする。単に外国人労働者に頼るだけでなく、こうしたデジタルの取り組みを同時に推進していくことが重要だと思います。

一方で、岩田地崎建設の岩田幸治社長は課題も率直に語っておられました。一つは、投資に対するリターンが見えにくいこと。もう一つは、社員のITリテラシーや意識の醸成です。前者については、国や自治体が補助金や支援策をさらに拡充すべきではないでしょうか。「将来に備えて経験値を積み上げたい」と思っても、投資余力がなくて踏み切れない経営者が実際にいることは事実です。

後者の啓蒙も、同じくらい重要です。現場が「使いたい」と考えれば、DXは間違いなくさらに進みます。ここで壁になるのは機器の物理的なコストだけではありません。新しいものを覚え、使いこなせるようになるまでにかかる「時間」への抵抗こそが、日々の工程に追われる現場ではむしろ大きいのです。本コラム第277回で、新しい機能を使いこなすには気力も体力も知力も、そして「使いたい」という欲求も要ると書きましたが、それは現場でも同じことでしょう。こぶし建設の担当者が安全確認システムについて「微々たる積み重ねだが、効率化につながっている」と話していたのが印象的でした。第271回で、AIは「使わせる」のではなく業務のなかに自然に「染み込ませる」ことが大切だと書きましたが、まさにその実践です。

そして、これは建設業だけの話ではありません。他の3K職種にも同じことが当てはまります。介護についても、ロボットやデジタル機器の導入にはまだ余地があるように感じます。DXやAIは今、どちらかといえばデスクワークの作業軽減に注目が集まっていますが、本来は現場作業の軽減にこそ、もっと大きく貢献すべきではないでしょうか。第279回第280回で、デジタルは人の力を消し去るものではなく「増幅」させる装置だと繰り返し書いてきました。現場の仕事においてはそれに加えて、人を危険と過酷さから遠ざけるという、もう一つの大きな役割があるのだと思います。

働き方が変われば、当然、社内のコミュニケーションも人材育成の方法も変わってきます。ならば私たち人事教育コンサルタントも、言われたことに応えるだけの受け身であってはなりません。技術の進展を自分事として学び、その変化が組織に及ぼす影響を先回りして考え、積極的に働き方や仕事の在り方そのものを提案していく。建設の現場で四足歩行ロボットが黙々と測量をしている光景を思い浮かべながら、そんなコンサルタントでありたいと感じている今日この頃です。

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