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高松 秀樹

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第280回:ローソンの実験が示す次の競争軸

2026/04/25

2025年に、ローソンが打ち出した「自動調理ロボ×出来たて」の取り組みは、単なる新商品開発にとどまらず、業態そのものの再定義を示唆しています。
1000円を超えるパスタをコンビニで販売する——この一見大胆な価格設定の裏には、明確な戦略意図があります。

鍵を握るのは、調理ロボを開発するTechMagicの技術です。
高火力・短時間で“職人に近い再現性”を担保することで、「誰が作っても一定品質」という外食産業の長年の課題を解消します。
ローソンにとって重要なのは、この技術が単なる省人化にとどまらず、「外食品質の標準化」という新たな価値をもたらす点にあります。

従来、コンビニは“作り置き×廃棄前提”のビジネスモデルでした。
ですが、注文後調理に切り替えることで廃棄リスクを抑え、その分を食材や品質に振り向けることが可能になります。
結果として、価格の上限は「コンビニの常識」ではなく「外食の相場」に近づいていきます。
つまり、競合は同業他社ではなく、街の飲食店へとシフトしているのです。

一方で、現場視点に立つと課題も明確です。
オペレーションは依然として人手に依存しており、ピーク時の待ち時間やワンオペ負荷といった問題は残ります。
多機能化が進む店舗ほど、スタッフの熟練度がサービス品質に直結する構造は変わっていません。
技術導入が“現場の負担軽減”と“業務の複雑化”のどちらに振れるかは、設計次第と言えるでしょう。

それでも、この挑戦の本質は「価格」ではなく「顧客体験の再設計」にあります。
昼はチャーハン、夜はパスタといった利用シーンの切り分けは、コンビニが“即食”から“食事の選択肢”へ進化している証です。
中食と外食の境界が曖昧になる中で、どこまで“出来たての価値”に対価を払うか——その市場実験が、いま店舗単位で進んでいます。

コンビニが飲食店になるのではありません。
飲食店の機能を、どこまで日常インフラに溶け込ませられるか。
その問いに対するローソンの取り組みは、業界全体の次の競争軸を映し出していると感じます。

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