2025年の大阪・関西万博は幕を閉じましたが、その後に何を遺すかという視点が、かつてないほど注目されています。
「大東建託」が発表したのは、万博会場の施設解体で出た木材を、全国の賃貸住宅の建設に再利用するという取り組みです。
各都道府県で少なくとも1棟に活用する方針で、「万博の記憶」を地域に根付かせる試みといえるでしょう。
対象となるのは、同社などが建設した「ポップアップステージ」の木製デッキなどで、使用された国産材を住宅の壁下地などに再利用する計画です。
さらに、会場内で使用されていた木造小屋も、トラックで運搬し、建設現場の事務所などに転用される予定です。
再利用される木材は、住宅の骨組みに換算して約9,100本分に及ぶとのことです。
万博施設は従来、会期終了とともにその役目を終えるケースが多かったですが、今回は、建築家・坂茂氏が設計した「ブルー・オーシャンドーム」がモルディブのリゾートホテルに移設されるなど、サーキュラーエコノミーの思想が広がりを見せています。
シンボル的存在だった「大屋根リング」の木材も、レガシーとして再活用される計画があるようです。
こうした動きは、建設業界の脱炭素化とも密接に関わっています。
国内のCO₂排出量の約4割を占める建設分野において、大東建託は2030年度までに温室効果ガス排出量を2017年度比で55%削減するという目標を掲げており、資材の再利用や現場の効率化はその一環と位置づけられています。
単なる資材の再利用にとどまらず、「場所の記憶」を次代へつなぐという発想──そこに企業の文化と責任のあり方が透けて見えてきます。
大東建託の取り組みは、真のレガシーとは何かを問い直す契機となるのではないでしょうか。