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深山 敏郎

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第168回 困ったときの老荘だのみ エピソード68

2024/09/03

毎回老子の言葉をひとつずつご紹介しています。
コラムの167回目では、「統治者はへりくだらねばならぬ」を検討してきました。
老子は言います。
「海のように大河や小さな川よりも低く振る舞う必要がある」と。

今回は「われに三宝あり」です。

「われに三宝あり」とは何か

今回は老子の言葉「われに三宝あり」の意味をご一緒に考えましょう。
老子は大きいということを例えて言います。
「世間は自分(老子)の説いている『道』を称して、大きいのは大きいのだが、どこか抜けているようだ」と。

老子はまた言います。
「『道』は大きいからこそ、抜けてみえる。抜けて見えないくらいなら大きいとは言うことができない」と。

『道』から導き出せる3つの宝

「道」から導き出せる3つの宝とは、以下の3つです。

1.「人をいつくしむ」心
2.「物事を控えめにする」態度
3.行動において「人の先に立たない」こと

これらの3つの意味はそれぞれ以下のことを意味します。

「人をいつくしむ」心を持っているからこそ、勇気が生まれます。
「物事を控えめにする態度」を持つからこそ、窮(きわ)まることがありません。
また、「人の先に立たない」からこそ、人を指導することが出来ると老子は言います。


「3つの宝を持たなければ」どうなるか

ではもし、こうした3つの宝を持たなければどうなるのでしょうか。
もしいつくしみの心を持たず、勇むことだけを志して、控えめな態度も取らなければいったいどうなるのでしょうか。
もう読者の皆様は想像なさったことでしょう。
結果は破滅あるのみです。

いつくしみの心を持つ人とは何でしょうか。
それは天が万物を保護する慈しみの心なのです。

会社経営、チームマネジメントによる3つの宝とは

老子のいう「3つの宝」を会社経営、チームマネジメントに活用するとすればどのようなことになるでしょうか。

「1.『人をいつくしむ』心」を活かした会社経営、マネジメントとは
会社経営はそもそも何のためにするのか、という原点に回帰することです。
会社は自らの利益追求だけではうまくいきません。
お客様の幸せづくりのお手伝いをして、第三者の幸せにもつながる、それで結果として自らも潤うというロジック(論理)ではないでしょうか。
部課長やチームリーダーなど組織やチームのトップに立つ人にとっては、部下が一所懸命に働いてくれるからこそ、組織やチームが成り立っているという原点に立ち返ることが、この言葉の意味なのです。

「2.『物事を控えめにする』態度」を活かした会社経営、マネジメントとは
ビジネスで成功している時にわれわれは、つい出しゃばりたくなります。
その結果どういうことが起こるのでしょうか。
われわれは会議では余計なことを伝え、統率しようとします。
それが結局、部下の自発性や創造的な発想の機会を奪ってしまい、結果としてバランスの悪い意思決定となる理由です。

「3.行動において『人の先に立たない』こと」を活かした会社経営、マネジメントとは
人を指導する立場の人は、会社の経営者であれ部課長やチームリーダーであれ、人の先に立って成功したと思っても、独りよがりにすぎないかもしれないということをご存じでしょう。
老子もそれを言いたいのです。
私たちはついつい組織のトップが発揮するリーダーシップを勘違いしがちです。
それを戒めてくれるのがこの言葉「3宝を持つ」ではないでしょうか。

本コラムが私たちの日々の悩みを和らげ、深く自省するきっかけになれば幸いです。

「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。

レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。

(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
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