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深山 敏郎

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第89回 職場組織のレジリエンス(6)情報開示の迅速さ

2023/02/28

前回は、職場組織、つまり会社単位のレジリエンスの第5回目として「コンプライアンスの徹底」についてお話してきました。

中小企業でもこの考えが必要なことをお伝えしました。
今回は「情報開示の迅速さ」というテーマでお話をします。

情報開示はなぜ迅速であるべきか

「コンプライアンス違反」にあたっても、例えそこまで深刻でないと思えても、組織の外部への情報開示の迅速さは重要です。

筆者の経験から情報開示が迅速でなかった例をいくつかご紹介しましょう。
ある自治体の研修をやっていた時に、若手職員から相談を受けました。
「清掃工場で実はある物質が基準値以上であることが分かりまして、どうしたらよいか迷っているのです。上司にも伝えづらくて」とのことでした。
筆者はもちろん上司にすぐに報告し、一般にも情報開示をするようにお伝えしました。
その数日後に、新聞に「〇〇市の清掃工場で、基準値を大幅に上回るダイオキシンが検出される」と報道されました。
これがもし隠蔽されていたら、と思うとぞっとします。
被害者が多く出た可能性もあるからです。

あらゆる組織にはステークホルダー(利害関係集団)がいます。
お客様、行政、地域社会、従業員、株主、取引先、地球の裏側の誰かというように、際限がありません。

例えば、組織外部に報告しづらいことであっても、迅速に伝えなければ投資家が被害を受け、投資市場から信頼を失うことも考えられます。
信頼は一度失ったら二度と帰ってくる保証はありません。
それが分かっているから私たちは日々努力をしているのです。

不都合なことこそ、迅速に伝える仕組みを作る

企業内では、不祥事や不都合を個人の判断に委ねるのではなく、ルールに則って迅速にトップに伝え、トップから社外に伝えるための仕組みが必要です。
「例えば、事実を確かめた当日に必ず伝える」といったルールが必須です。

そうしたルールが無いと、情報開示するタイミングが個人に委ねられて、多くの利害関係集団に迷惑をかけます。
企業はあくまでも、社会の中で活動する許可を得ています。
それを自覚して、不都合が生じた時にはルールに則って、迅速に開示します。

当然のことなのですが、上記のようなことは多くの企業で実践されていません。
社内のルールがあっても、それに従って、迅速に行うことが出来ていない組織が数多くあるのです。
組織運営の基本を忘れた状況であるといえるでしょう。
レジリエンスの高い組織にするには、情報開示の迅速性が必須であることを肝に銘じたいですね。

レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。

 (筆者:深山 敏郎)
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