HACHIDORI NO HANE(ハチドリのはね)HPトップ

益田 和久

ホーム > 益田 和久 > 記事一覧 > 第35回 パーソナルルーム

第35回 パーソナルルーム

2021/11/04

若手、中堅社員向けの研修で、上司とのコミュニケーションの現状をお尋ねすると、必ず話に出てくるのが「上司が忙しそうで話しかけにくい」という意見です。
これは今日に始まったことではなく、以前からよくある話ですよね。
私自身も四半世紀前の若手社員のときには感じていましたし、更に上司が機嫌が悪そうな雰囲気だと、重苦しい気分になって「どのタイミングで、何て話しかければいいか」ということを1時間くらい悩んだこともありました(苦笑)
最近では、メールやSNSなどの「文書コミュニケーション」が主流となっていますので、こういった「対面コミュニケーション」においてストレスのかかるような場面は、若手、中堅社員の方はついつい億劫になってしまうのではないでしょうか。

一方で上司の側も、部下が自分に対して話しかけにくいような状況や雰囲気があり、何とか解消しようとしている方も多いのではないでしょうか。
1on1ミーティングの実施や部下への頻繁な声がけなど、話しやすい関係づくりに向けての様々な取り組みは、あちらこちらで伺います。
同時に、コロナ禍以降のリモートワークの推進やアフターファイブコミュニケーションの減少で、会話のきっかけが掴みにくくなっていることも、声としてよくあがってきます。

インフラ系の関連会社のお客さまで、次世代リーダー養成をお手伝いしている会社があります。
昨年の受講者Kさんは、自身も上司に話しかけにくい場面を何度も経験してきており、自分が上司になったらそのようなことがないようにしようと思っていました。
ところが管理職になってみると想定以上に忙しく、部下とコミュニケーションがとれていない自分がいることに気づきました。
それは物理的な忙しさだけでなく、忙しさのあまり自分に余裕がなく、緊迫した表情をしている自分もいるということに、自身の上司からのフィードバックで気づきました。

そこでKさんが考えたのは、「業務のことだけでなく、雑談や世間話、ブレスト的な対話等、領域を決めずに、部下が何でも相談できる時間」を定期的に設定しようということでした。
リモート勤務の社員もいますので、Zoomやteamsでミーティングスペース設定し、週に1〜2回、各1〜2時間ほど気軽に話ができる場所にしようというものです。
通称「Kの部屋」と名付け(笑)、部下に周知をしました。

最初は部下たちも「何を話すんだろうか」と半信半疑だったようですが、一人のメンバーが怖いもの見たさで入室してみたところ(笑)、Kさんはリラックスした雰囲気で話を聴いてくれ、スッキリした気持ちで仕事に臨むことができたようです。
噂はまたたく間に他のメンバーに広がり(笑)その次からは、ルーム入室者が後を絶たないようです。
いつもKさんと一対一でもなく、また明確な相談事でもなく、そのときにルームにいるメンバーが、そのときの雰囲気で「真面目な雑談、世間話」をするという流れが少しずつできているようです。
Kさん曰く「メンバーとこれまで以上にコミュニケーションがとりやすくなってきたので、メンバーからの要望も吸い上げながら進化していきたい」とのことでした。

働き方改革やリモートワークの推進で、世の中全般的に残業が少なくなったようですが、同時に社員間のコミュニケーション、特に雑談や世間話が少なくなったことも事実です。
新しい生活様式に移行している今このときに、新しいコミュニケーションの手法をいろいろと試してみることが必要ではないでしょうか。