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深山 敏郎

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第10回 レジリエンスとワークエンゲージメント(2)

2021/08/24

前回は、レジリエンスと「ワークエンゲージメント(ワーク・エンゲイジメントともいう)」の関係について理解してきました。

今回は、「ワークエンゲージメント」を実現するために重要な考え方である「ジョブ・クラフティング」について理解していきましょう。

「ジョブ・クラフティング」によってワークエンゲージメントが高まる

〇ジョブ・クラフティングとは何か
ジョブ・クラフティングとは何でしょうか。クラフトとは、「工芸」という意味です。職人の仕事ぶりといっても良いでしょう。仕事を楽しみ、仕事から多くを学び、成長していくことが嬉しいと思うことです。働き甲斐、生き甲斐といっても良いでしょう。

ジョブ・クラフティングという概念を提唱したのは、アメリカ合衆国の二人の学者 エイミー・レジネスキーとジェーン・E・ダットンであると言われています。

上司から言われたことを忠実に実行するという仕事の進め方から、働く人の主体性を重視して、仕事を楽しみながら生き甲斐に育てていくことを会社が支援するという考え方です。

〇ジョブ・クラフティングをあらわすたとえ話
ジョブ・クラフティングを表現するために、経営学者でコンサルタントであった故ピーター・F・ドラッカーが用いたたとえ話が分かりやすいでしょう。3人のレンが積み(あるいは石工)といわれるものです。

旅人が一人目のレンガ積みに、「あなたは何をしているのですか」という質問をしたら、そのレンガ積みは、「見れば分かるだろう。親方から言われてレンガを積んでいるんだよ」という答えでした。

二人目のレンガ積みにも同じことを尋ねました。二人目は「レンガで塀を作っているところだよ。」と言いました。

三人目は、「礼拝堂を造っているんだよ。これまで村には無かったからね。きっとみんな喜ぶぞ」といった意味のことを言いました。

〇三人のレンガ積みの仕事観:ジョブ、キャリア、天職(コーリング)
一人目のレンガ積みは、仕事を「生計をたてるためにやむを得ずやっていること」ととらえているのです。これを、ジョブ(Job)と呼びます。この考え方で働いている人は意外と多いのではないでしょうか。指示されたことだけを実行するというタイプです。今の日本の多くの職場に蔓延している状況ともいえます。これでは仕事は面白くありません。

二人目のレンガ積みは、自分がある程度の「かたまり」の仕事を任され、仕事を通じて自分の能力を向上することに楽しさを覚えています。キャリア(Career)という考え方です。ある程度実績をあげ、自分の裁量でできる仕事を任された状態などがこれにあたります。

三人目は、ジョブ・クラフティングの究極の目的といえるでしょう。とにかく仕事が楽しくてしようがないという状況で、その仕事が自分の人生にとってなくてはならないものと考えている状況です。絶えず仕事上の工夫をし、その仕事を通じて他者に喜びを与えようとします。天職(Calling)と言っても良いでしょう。自分が活き々々できる場として仕事をとらえています。

私たちは誰でもものごとを選ぶ権利があります。したがって、仕事をジョブととらえるか、キャリアととらえるか、天職と考えるかは個人の自由です。

ジョブ・クラフティングが目指すものは、組織から指示・命令されたのではなく、自ら選んだ結果、仕事を天職ととらえられるということです。つまり、ジョブ・クラフティングは、仕事を前向きにとらえ、活き々々と働く、ワークエンゲージメントの状態になるために非常に有効であるということです。

次回は、ジョブ・クラフティングを有効に活用した組織的な取り組み事例をご紹介しましょう。

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