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岩田 徹

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第29回 大谷翔平選手のセーフティバント

2021/07/02

2021年6月17日、エンゼルスVSアスレチックス。
大谷翔平選手はこの日も2番投手として先発出場。
2回の第2打席に2試合連続となる19号ホームランを放ちました。
そしてエンゼルスが4-1とリードの5回表の攻撃。
この回の先頭打者は大谷選手でした。
初球は大きなスイングでのファール、2球目はインコースへのボール。迎えた3球目。
大谷選手は三塁方向にセーフティバントをし一塁を駆け抜けました。
さらに次の打者の2球目には盗塁を成功させ、無死2塁のチャンスを作りました。

近年の野球はデータ分析が大きく進み、多くの強打者が守備のシフトを敷かれます。
大谷選手の場合、右翼方面の打球が多い傾向があることから、
アスレチックスの守備陣は右翼方面に集中的に守備網を敷き、
大谷選手を打ち取ろうとしていました。
反対方面に打てば守備陣がいないためヒットで出塁しやすい場面ですが、
長打力のある大谷選手が相手ならシングルヒットならO K、長打になるよりはマシ。
という相手の考え方です。
また打者の心理としても強打者と言われるほどプライドがあり、
守備陣がいない方向に打球を打つよりは、そのシフトを打ち破り、
できれば長打での出塁を考えがちです。
結果、守備シフトに引っ掛かり出塁できない、というケースも多いです。

大谷選手はこの場面、前の打席でホームランを打っています。調子もよかったでしょう。
しかし3球目、守備シフトの逆をついてバントで出塁したのです。
試合後のインタビューで、「4-1で中盤を迎え、まだまだどちらに流れが行くか
わからない状況だった。引っ張って長打を狙うより、確実に塁に出て
流れを相手に渡さない方が賢明だと思った。」とお話されました。

自らの成績、プライドではなく、
ゲーム全体の流れ、相手投手との関係性、守備の陣形などを総合的に判断し、
確実に出塁する選択肢を取り、その後に盗塁を決めて長打と同じ状況を作り出す。
頭を使う野球の一端を見れたプレーだったと思います。

〜中小企業の採用・育成のヒント〜

テクノロジーの進展と便利で安価なサービスの登場で、
経営、採用、育成、定着の分野においてもデータの蓄積、分析が進み、
守備シフトに近い攻略法を提示してくれるようになりました。

しかし、テクノロジーやデータに頼りすぎることで、
本来使うべき脳、感覚を置き去りにしている場面はないでしょうか。
会社や組織内でのちょっとした変化、
テクノロジーやデータには現れづらい個人個人の微妙な心境の変化などは、
やはり頭や心を使わないと気づかない部分もあると思います。

人と人とのつながりで力を発揮する組織においては、
機械的な対応ではなく、心のこもったコミュニケーションや判断行動が
求められているように思います。