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深山 敏郎

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第164回 困ったときの老荘だのみ エピソード64

2024/08/06

毎回老子の言葉をひとつずつご紹介しています。
コラムの163回目では、「真理は善不善の彼岸にある」を検討してきました。
老子は言います。「善に偏った考え方は、『道』にのっとっているとはいえない、と。

今回は「聖人は大をなさず」です。

「聖人は大をなさず」とは何か

今回は老子の言葉「聖人は大をなさず」の意味をご一緒に考えましょう。

老子は言います「聖人は終生、大事に直面することはない」と。

難事は、もつれぬ先に処理し、大事は、小事のうちに収拾する

どのように難しく見える問題も、その発端に遡って考えれば単純な問題にすぎず、いかなる大きな憂い事であろうとも、その発端はつねに些細なことだからです。

老子は言います、「難事は、もつれぬ先に処理し、大事は、小事の内に収拾する」と。

私たちはとかく小さく見える問題を放置し、大きくなってから騒ぎ立てます。
放置された問題は結果として、大問題になってしまい処理にも時間がかかります。
それとは逆に、どのような小さく見える問題も熟慮を要する問題だと考えることによって、さっそく解決に向かいます。

聖人はこのように問題がもつれぬ内に収拾、つまり解決することを心がけます。
それゆえに結果として、大きな問題になることを避けられるわけです。

老子はこうも言います。
「無為を守って『道』にのっとり、感性による判断を捨てて『道』を認識する」と。つまり、「道」にのっとっていれば自分の感性によってぶれることが無いということです。

この「ぶれる」とはどういうことでしょうか。
感情などに振り回されることを、老子は言いたいのです。例えば老子のいう「道」にのっとるということは「怨み」といった小さな感情は捨ててしまいましょう、ということです。

ビジネスでは勝った・負けたに終始していてよいのか

ビジネスの大儀は「世のため人のため」に起業し、商品を創ること。そしてそれを継続すること。そのためにはお客様を大切にすること、世の中のためになる事業を心がけることが第一です。現実のビジネス世界を見てみると、他社にシェアや売上・利益、そして企業価値が勝った・負けたということがあたかもビジネスのすべてのように感じさせられます。まるで戦争のようです。

これは誰の観点から検討しているのでしょうか。肝心な「世のため人のため」が欠落してはいないでしょうか。老子の言葉はその死後数千年が経過したといわれる現代でも脈々と生きています。私たちは、仕事の本来の意味に立ち返ろうではありませんか。

本コラムが私たちの日々の悩みを和らげ、深く自省するきっかけになれば幸いです。

「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。

レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。

(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
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